ブーイングが拍手に。ブラジルはようやくサポーターの信頼を勝ち得た (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 その後、アルトゥールのフリーランが中盤にスペースを生むようになり、最終ラインのマルキーニョス(パリSG)からFWへのコースができ始めた。パラグアイDF陣に対してブラジル攻撃陣の圧が高まり、54分にはロベルト・フィルミーノを倒したファビアン・バルブエナ(ウェストハム・ユナイテッド)にレッドカード。ブラジルが数的優位に立った。

 ここからは、エベルトン、ロベルト・フィルミーノ、コウチーニョ、アルトゥール、ウィリアン(チェルシー)がシュートを乱れ打ち。だが、パラグアイは身体を張ってブラジルの攻撃を防ぎきり、0−0のままタイムアップ。狙いどおりにPK戦まで持ち込んだ。

 1巡目、パラグアイのグスタボ・ゴメス(パルメイラス)のシュートをGKアリソンがストップ。すると、徐々に熱気が高まっていき、ブラジルサポーターは「アリソン! アリソン!」「(3巡目のPKを決めた)コウチーニョ! コウチーニョ!」と名前を連呼し始めた。

 ブラジルは4巡目のロベルト・フィルミーノが失敗するも、5巡目のパラグアイもデルリス・ゴンサレスがゴールできず、あと1本と迫る。そして、ブラジルの5番手のガブリエル・ジェズスが勝利のPKを決めた瞬間、スタジアム中に大きな声が鳴り響いた。

 サッカー王国らしい会心の試合内容ではなかった。だが、チームとファンのムードを高める勝利だった。2週間前の冷めたスタジアムだったら、ブラジルはこのPK戦を落としていたかもしれない。本命ブラジルにとって、大会の転機となるゲームになりそうなポルト・アレグレの激闘だった。

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