久保建英をスペイン人記者が分析「バルサ出身者の特徴を感じる」 (2ページ目)

  • ハビ・シジェス(スペイン紙『as』記者)●文 text by Javi Silles
  • 江間慎一郎●翻訳 translation by Ema Shinichiro

 彼のプレースタイルは、たしかにバルセロナの下部組織「マシア」で学んでいたのだと感じさせる。その最たる例が、「ビシオン・ペリフェリカ」(周辺状況を把握する力)だ。マシアでは最善のプレーをいち早く実行するために、自身の周囲にある状況を常に確認することを義務づけられており、久保もシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタらと同じく何度も首を振って辺りを見回している。コパ・アメリカではチリ戦、そしてエクアドル戦と、そうしたマシア出身者の特徴がしっかりと感じられた。

 とくにエクアドル戦は、圧巻の一言である。日本のすべての攻撃は、久保を経由して実現されたと言っても過言ではない。エクアドルのMF&DFのライン間で巧みなポジショニングを見せてボールを受け、そのポジショニングとテクニックの妙によって素早く前を向き、ギリギリを突くアシストを実現......。過剰にテクニックを見せつけることなく、スピードを落とすことなく実行されるこのシークエンスによって、日本はゴールを決める権利をあれだけ享受することができたのだった。

 さて、レアル・マドリード首脳陣は、久保がプレー的にも言語的(チリ戦の後にスペイン語圏のメディアに対して語ったスペイン語は、あまりにも完璧だ!)にも、素早くクラブに順応することを疑っていない。もっと言えば、彼をカスティージャ、ひいてはトップチームのガラクティコ(銀河系選手)にすらなれる存在と考えている。

 とはいえ、久保がレアル・マドリードで最初に挑戦する舞台は、セミプロ扱いのリーガ2部Bである。2部Bはじつに雑多なリーグで、23歳以下の選手で構成される有力クラブのBチームほか、百戦錬磨のベテラン選手たちを数多く擁するチームがしのぎを削る。対戦するチームは、じつに多種多様。主導権を完全に譲って後方で待ち受けるチームもあれば、逆にポゼッション率で上回ろうとするチームも存在する。久保は振れ幅の大きな戦いで、ポジショナルな攻撃とトランジションを生かす攻撃のどちらでも、その有用性を示さなくてはならない。

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