欧州サッカー番長3名が「CL覇者リバプールの進化」を分析した (5ページ目)

  • photo by Nakashima Daisuke

倉敷 それは、小澤さんがよくおっしゃっている「サリーダ・デ・バロン」にあてはまる話ですね。あらためて、わかりやすく説明していただけますか?

小澤 たとえば今シーズンのラ・リーガでは3バックを使うチームが多かったのですが、その場合、ビルドアップのときに相手は前から3人でハメようとします。そこで3バックのチームはGKを加えて4対3にして、数的優位な状況を作ってプレスを外し、ビルドアップを行なうのがトレンドでした。ところが、それなら最初から最終ラインを4枚にすることで数的優位を作った方がいいということで、シーズン途中から4バックに変更するチームが増えました。

 シーズン中に相手のプレッシングに応じて3バックと4バックを使い分けるチームが増加した傾向、ベティスのようにこの1年3バックが定番だったチームが終盤に4バックを使った点を見ても「ボールの出口」を意味する「サリーダ・デ・バロン」において複数のパターンを用意することは今の欧州において必要不可欠なものとなりました。

 基本的に最終ラインは相手のプレッシングの枚数にプラス1で考えるのが一般的なので、GKを使ってプラス1にするのか、最初からディフェンスラインの人数を増やしてプラス1にするのか、というところは、監督の好みということになります。

倉敷 なるほど。では、スパーズの戦術の話に移りましょう。中山さんはどのような特徴があると見ていますか?

中山 戦術的に特筆すべき点はなく、オーソドックスな印象ですね。奇跡的な逆転で勝ち上がってきたことが象徴するように、決勝まで勝ち上がれたのは勢いという要素が強かったのかなと思います。

とはいえ、ポチェッティーノの戦術バリエーションは確実に増えていると思います。とくに今シーズンは選手の補強ができなかったうえ、シーズン序盤からケガ人も多かったので、苦しい台所事情で多くのシステムを使い分けて何とかやりくりしていたという印象があります。そういう点で、監督としてもチームとしても対応力が上がったと言えるでしょう。3バックにしても4バックにしても、それぞれ2、3種類を起用選手や試合の局面によって使い分ける術は磨かれたと思いますし、戦術的なトレンドは感じられないにしても、少数精鋭で長いシーズンを戦い抜くためのひとつの方法を提示できたと思います。

倉敷 たとえばデレ・アリとソン・フンミンとクリスティアン・エリクセンの並べ方など、シーズンのなかでいろいろな意見がありましたね。

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