欧州サッカー番長3名が「CL覇者リバプールの進化」を分析した (3ページ目)

  • photo by Nakashima Daisuke

中山 それで言うと、昨シーズンまでのリバプールは出入りの激しいゲームが多かったという印象があった一方で、今シーズンはどちらかと言うと安定したディフェンスが際立っていた印象があります。今回の決勝戦ではそのストロングポイントをいかんなく発揮したと思いますし、そこが今シーズンのリバプールがいちばん進化した部分なのではないでしょうか。もちろん、フィルジル・ファン・ダイクの存在が大きいとは思いますが。

倉敷 小澤さん、チャンピオンズリーグで優勝したチームのサッカーが「この頃流行りの」と言われることもよくありますが、今シーズンのリバプールのサッカーがトレンドといっていいですか?

小澤 一部あるでしょうね。相手のビルドアップの枚数に合わせる形でハイプレスを仕掛ける積極的な守備戦術がデフォルト化したことで現在の欧州トップレベルの舞台ではボールを保持するサッカーが勝ちにくくなっています。そんななか、リバプールは状況に応じてハイプレスからのショートカウンターと最終ラインからの精度の高いロングパスを使ったロングカウンターをきちんと両立させられていますし、今シーズンのリーグ戦でも示したように、守備の安定があったからこそCL決勝に勝ち上がれたのだと思います。

 ファン・ダイク、アリソン・ベッカーの安定感が際立っていましたし、中山さんが指摘したように、この試合ではボールを奪う位置が低かったなかでもジョエル・マティプやファン・ダイクから対角線に入れる質の高いロングパスがとても効いていました。

 それと、個人的にはこの試合でスパーズとの違いはサイドバックだと思って見ていました。アレクサンダー=アーノルドとアンドリュー・ロバートソンの上がりを使って攻めることもできますし、彼らは自分でボールを運ぶドリブルがうまい。また、アレクサンダー=アーノルドはとにかくミドル、ロングレンジのパスの精度が格段に高い。そこも含めて、リバプールはボールも持てるし、カウンターや攻守の切り替えが激しい「ボックス・トゥ・ボックス」のサッカーもできる。この決勝のような緊張感のあるゲームで先制した後に、引いてソリッドに守ってロングカウンターを狙うというサッカーができたことを見ても戦術的な引き出し、幅のあるチームです。

 かといって、リバプールが完全にボールを捨てているかというと、逆に今季のプレミアリーグの戦いぶりを見ても、かなりボールを支配していますので、両方を繰り出せるという点がトレンドなのだと思います。今回の決勝でも、それを示すことができたのではないでしょうか。

倉敷 中山さんは、今シーズンのリバプールのサッカーについてどんな印象をお持ちですか?

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