ロナウドより輝いた。ポルトガルの新エースがネーションズリーグMVP (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • ムツ・カワモリ●撮影 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 次々に優れた選手と監督を輩出するポルトガルについて、フェルナンド・サントス監督は、UEFAのインタビューで次のように話している。

「この国には、本当の意味でフットボールが息づいている。日々の暮らしと切り離せないものなのだ。ポルトガルの子どもたちは、幼いころからストリートでボールを蹴り始める。だから、フットボールを理解する能力が自然と養われるのだと思う」

 ストリートフットボール──。社会の近代化に伴い、多くの国で失われてしまったものだ。けれども、伝統や本質的なものを尊ぶこの国には、今もそれが残されているのだろう。そして心優しき人の多いポルトガルは、煤けた通りにも危険は少ない。

 ネーションズリーグの初代覇者となった代表チームの選手たちには、そんなストリートの香りが漂う。その筆頭がベルナルド・シウバだ。

 おそらく幼少期から近所の大人たちに混じって、来る日も来る日も技を磨いたのだろう。凹凸のある石畳の小道でボールの変則的な動きを体で覚え、自分より大きな相手にはどんなプレーが有効なのかを体得する。整った環境では得られないスキルや理解力がベースとなり、ベンフィカというエリートクラブの育成組織に入ってからは、芝の上で必要ないろはを学んでいったはずだ。そして2年前から、現代随一の名指揮官のもとで特大の才能を完全に開花させた。

 オランダとのファイナルでは、スタートポジションが右のウイングながら、周囲と呼吸よくポジションを変え、とにかくボールに絡み続けた。開始早々、ロングフィードに抜け出して、見事なトラップからボックス内でシュート体勢に入ったところで倒されたが、笛は鳴らず。その後は、ブルーノ・フェルナンデスにおあつらえむきのパスを出して、2度のミドルシュートを導き出したりもした。

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