ロナウドの後継者は移籍金150億円。
19歳ジョアン・フェリックスの実力

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

「王者の覇気」

 それは、ポルトガルから生まれ、世界サッカーに君臨した選手に共通する要素かもしれない。何かをやってのける気配があり、チームを救い、勝利に導く存在と言えるかもしれない。

 1980年代から1990年代初頭のパウロ・フットレ、1990年代から2000年初頭のルイス・フィーゴ、そして現在までのクリスティアーノ・ロナウド。それぞれ所属クラブ(フットレはポルト、フィーゴとロナウドはレアル・マドリード)で、エースとして欧州王者を経験している。3人はそれぞれのキャリアの最後と最初で重なり合っており、ポルトガル代表としても世界にその名を轟かせた。

「ルイス(フィーゴ)はうまかったですが、それ以上に、誰にも負けないという気概を持っている子どもでした」

 筆者はかつて、フィーゴのルーツを辿って、当時、スポルティング・リスボンで育成部長だったアウレリオ・ペレイラに話を聞いたことがあった。フットレ、フィーゴ、そしてロナウド。3人とも、スポルティングの下部組織出身である。

「ルイスはどんな試合でも失敗を絶対に怖れなかった。ボールを持ったら無敵。簡単に聞こえますが、すごいことなんです。子どもはたいてい失敗すると逡巡し、萎えてしまう。でも、ルイスは決して弱気にならなかった。その強い心が彼を上り詰めさせたのでしょう。面白いことに、とてもよく似ていたのが、クリスティアーノ(ロナウド)です。クリスティアーノはフィーゴよりも、身体的な強さがありましたが」

 そしてポルトガルに、次代を担うひとりの新鋭が現れた。今度は、スポルティング出身者ではない。

 今季、ベンフィカのリーグ戦制覇に貢献したジョアン・フェリックス 今季、ベンフィカのリーグ戦制覇に貢献したジョアン・フェリックス ジョアン・フェリックス。スポルティングの永遠のライバルであるベンフィカ所属の19歳だ。

 6月5日のUEFAネーションズリーグ準決勝で、ポルトガルはスイスと対戦する。ジョアン・フェリックスは代表選手23人のリストに名を連ねている。出場の見込みだったU-20W杯は回避。すでにユース年代の選手ではないという判断だろう。

 2018-19シーズンは、ベンフィカで颯爽とプレーしている。ヨーロッパリーグ、フランクフルト戦でのハットトリックなど20得点を記録。チームのポルトガルリーグ制覇に貢献し、10代のルーキーとして突出した才能の輝きを見せた。

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