悲願のタイトルを手にしたクロップ。CL決勝は経験がモノを言う

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

「この勝利はスタジアムだけでなく、世界中で我々をサポートしてくれたファンに捧げたい。彼らは今、狂ったように祝杯をあげているはずだ。そして明日、リバプールにいる人々と一緒に祝うことができる。センセーショナルな夜になるだろう。ただ率直に言って、私は何よりもホッとしているよ」

優勝トロフィーを手にして歓喜するクロップ監督優勝トロフィーを手にして歓喜するクロップ監督 リバプールのユルゲン・クロップ監督は、チャンピオンズリーグ決勝後の記者会見でそう話した。自身3度目のCL決勝で、宿願を達成したドイツ人指揮官は穏やかなトーンで続ける。

「安堵したのは、私の家族のためでもある。想像できると思うけど、うちの家族はとても仲が良いんだ。過去6度(のカップファイナル)のあと、私たち家族は銀メダルと共にバケーションへ出かけていた。それはあまり良いものではなかったよ。でも今年はまったく違う。だからこの勝利を、家族にも捧げたい」

 いつもどおりの滑らかな口調ではあるが、感情が歓喜だけに支配されているようではなかった。あるいはすでにピッチ上で、選手やスタンドのファンと喜びを分かち合ったあとだからかもしれない。

「もちろん、この勝利は選手たちのものだ。ピッチ上では、チームのほとんど全員が泣いていた。本当に感動的で、得たものが非常に大きかったからだ。このタイトルが意味するものは、我々にとってとてつもなく大きい」

 前日の会見で、自身のキャリアの運について訊かれたクロップ監督は、「自分のここまでのキャリアはアンラッキーではない。むしろ、私の(決勝での)ミスが物語っている。私のチームは2017年を除き、2012年から毎年、(カップ戦の)決勝に勝ち進んでいる。少なくともこの7年間、私は準決勝の勝利に関する世界記録を持っている」と返答。強がりに聞こえなくもないが、「同業者の間で、監督をタイトルの数で評価する人はほとんどいない。それはあなたたち、外部の人がすることだ」と話している。それでもやはり、実際に掲げたトロフィーの感触は、この上ないものだったはずだ。

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