CL決勝を杉山氏が現地で戦術分析。
両チームとも通常と違うキャラだった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 サッカーは結果に対して運が3割ほど影響を及ぼすと言われる。だからつい、タラレバ話をしたくなる。チャンピオンズリーグ決勝、リバプール対トッテナム・ホットスパー(スパーズ)戦も例外ではなかった。

 試合開始わずか数十秒。左サイドでバックラインの裏にボールを運んだサディオ・マネが、真ん中に際どいクロスボールを送ろうとした瞬間だった。スパーズのムサ・シソコは、中央で構えるセンターバックに右手を挙げ、なにがしか指示を送るような仕草をした。

 それはマネがキックをするタイミングと完全に一致してしまった。ボールはその右胸に直撃。さらに挙がった右腕にもヒットした。その結果、ボールはコースを大きく変化させた。この光景を目の当たりにした背後に陣取るスパーズサポーターも、さすがに沈黙せざるを得なかった。

 ペナルティエリア内のハンドの判定は間もなく、「故意かそれに準ずるアクションでなければPKにはならない」に変更されると言われるが、このシソコのハンドはどうなるのか。手は挙がっていたが、故意ではなかった。いずれにせよ、残念ながら現行のルールではPKである。

 このチャンピオンズリーグ(CL)決勝は、ロシアW杯後に行なわれた試合のなかで、最も重い、まさに大一番である。そこでいきなりこのハンドが発生した。両チームの前戦(準決勝)が歴史に残る大逆転勝利で、その余韻を引きずっていたと言えるのかもしれないが、サッカーの神様も罪作りなことをしてくれるものだ。

 モハメド・サラーが蹴ったPKが決まったのは開始2分。下馬評で上回っていたリバプールが先制するという展開は、判官贔屓と好試合を期待する第三者にとって面白いものではない。このPKを「早すぎるゴール」と位置づけたくなった。

チャンピオンズリーグで優勝し、歓喜するリバプールの選手たちチャンピオンズリーグで優勝し、歓喜するリバプールの選手たち このままリバプールがゲームを支配すれば、1枚も2枚も上手であることを意味するが、スパーズが押し返せば、お互いの戦力は拮抗していることを意味する。主導権を握るのはどちらか。注目はそこに集まった。

 リバプールが激戦をモノにしてきた背景にあったのはプレッシングだ。グループリーグのパリ・サンジェルマン戦、決勝トーナメント1回戦のバイエルン戦、激闘となった準決勝のバルセロナ戦しかり。高い位置からガンガン迫っていったことが奏功した。強者を慌てさせる原因になった。だが、1-0でリードした決勝戦のリバプールには、そうした魅力はまったく拝めなかった。

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