バルサ移籍報道に「ノー」の嵐。好漢グリーズマンが嫌われている (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 今シーズン、アトレティコの選手としてグリーズマンがバルサの本拠地であるカンプノウにやってくると、フランス人FWがボールに触れるたび、バルサファンは執拗なブーイングを浴びせた。憎悪の感情が生まれてしまっていた。

「大多数のファンは、グリーズマンを求めていない。大金が必要だしね。グリーズマンの役割を果たせる選手は、バルサの中から出てくるはずだよ」

 元会長のジョアン・ラポルタの指摘も、かなり手厳しい。ちなみにグリーズマンの移籍金は、フィリペ・コウチーニョ、ウスマン・デンベレとほぼ同じ。特別に高い買い物ではないのだが......。

 グリーズマンは世界有数の選手である。実力、実績で言えば、コウチーニョ、デンベレを上回り、メッシ、クリスティアーノ・ロナウドに次ぐと言っていい。バルサの戦いにフィットできるセンスも持っている。戦術適応力が高く、トップ下、サイドアタッカー、FW、あるいは偽9番と、あらゆるシーンで技術を出せる。パサーにも、ドリブラーにも、そしてフィニッシャーにもなれる選手だ。

「グリーズマンは決定的な仕事ができるし、それはアトレティコで十分に証明している。バルサでも同じ仕事をしなければならない。ただし、メッシが違いを見せるなかでね」

 かつてバルサでプレーした元ブラジル代表リバウドは、挑戦の難しさを語っている。

 カンプノウの人々に懐疑的な目を向けられながら、グリーズマンは憎しみを愛情に変えられるのか――。

 ひとつ言えるのは、グリーズマンは侠気(きょうき)を感じさせる選手だということだろう。たとえばアトレティコがUEFAから選手補強禁止(18歳未満の選手獲得に関する違反)を言い渡されたときは、男気を出して残留。チームのために身を粉にした。自由奔放なところはあるが、気概は感じさせる選手で、選手間での評判は決して悪くはない。

 もう10年近く前の夏だった。筆者はその実像に触れたことがある。当時、レアル・ソシエダで10代最後の日々を謳歌していたグリーズマンは、クラブハウスの外で上半身裸のまま、アイスキャンディーを片手にうろうろしていた。日本人が珍しかったのか、日本について親しげに聞いてきた。そして満足したように、もしくはどうでもいいという素振りを見せながら、去り際には人なつっこい笑みを浮かべた。

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