「久保建英の理想のシナリオ」をバルサBの実状から考えてみた (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 たとえば21歳のFWカルラス・ペレスは、トップ昇格を視野に入れ、ポルトガルの名門ベンフィカのオファーを断り、今シーズンは残留していた。しかし、バルサBではチーム最多の9得点と気を吐いたものの、トップではほとんど出場機会を与えられなかった。

 バルサBからトップチームへ上がる自然な流れを作るには、バルサBが2部へ昇格する必要があるだろう。

 かつてジョゼップ・グアルディオラは、「バルサの根本はラ・マシア(育成組織)にある。その頂点であるバルサBの強化は欠かせない」と主張。トップチーム監督のオファーを受けながら、当時、4部リーグに落ちていたバルサBを率いて、1年で3部へ引き上げている。そして次のシーズンからはトップチームを指揮、セルヒオ・ブスケッツ、ペドロをトップへ引き上げ、一時代を築いた。

 その後、バルサBはルイス・エンリケに率いられ、2部に昇格した。2010-11シーズンには、マルク・バルトラ、チアゴ・アルカンタラ、クリスティアン・テージョ、セルジ・ロベルトなどスペイン代表の有力選手を擁し、なんと3位にまで躍進している。時を同じくして、バルセロナのトップチームはかつてない栄華を誇ったのだ。

 来季、バルサBは新体制で2部昇格に挑むだろう。最終節では、17歳のMFニコ・ゴンサレスがリーグデビュー(カタルーニャ杯では昨年11月にデビューしていた)。準備はすでに始まっている。

 ニコは、90年代にデポルティボ・ラ・コルーニャで活躍した天才MFフラン・ゴンサレスの息子として知られる。フランは左利きでセンスに溢れ、バルサが白紙の小切手を用意したほどだった。一方、ニコは身長190cm近い大型センターハーフで、ダイナミックなプレーを持ち味とする。父フランがグアルディオラと親しく、マンチェスター・シティで育成の仕事をしていたことで、昨シーズンまではニコもシティのユースに在籍していた。

 そして同じ歳の久保は、このニコとバルサ時代、チームメイトだった。ニコがパスし、久保が決める。お互いが技を高め合っていたという。

 FC東京で劇的な進化を遂げる久保にとって、機は熟しつつある。

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