初ゴールの酒井宏樹と、5失点の昌子源。日本人ダービーの明と暗 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 また、2-2で迎えた76分には、目の前で酒井のピンポイントクロスを途中出場のクリントン・エンジに決められて逆転を許し、90分にはそのエンジのスピードに対応しきれず、トヴァンのゴールをアシストされてしまった。最終的にホーム最終戦を2-5で大敗してしまったことも含めて、試合後に昌子が味わった悔しさは想像に難くない。

 とはいえ、この試合で喫した5失点のうち、昌子個人で対処できたと思われるのは4失点目のシーンくらいで、それ以外はチーム全体の問題が大きい。その失点にしても、エンジのスピードを事前情報として把握できていれば、ロングボールを入れられたときのポジショニングも違っていたはずで、それほど悲観する必要はないだろう。

 なにより、初めてのヨーロッパ、しかも規格外のアタッカーが多いリーグ・アンでまだ半年も経過していないなか、第21節(1月19日)のスタメンデビュー以来、フランスカップも含めた全19試合連続で先発フル出場を続けていることは画期的と言える。

 すでに出場時間は1530分。4バックのセンター、3バックのセンター、3バックのサイドなど、あらゆるポジションでプレーし続けていることも、アラン・カサノヴァ監督から全幅の信頼を寄せられている証拠だ。しかも、トゥールーズのクリーンシートが、昌子加入前と後では3試合から6試合に倍増しているという事実も見逃せない。

 そんな昌子にとって喫緊の課題として挙げられるのは、仕掛けてくる相手に対する1対1の対応だ。同じく5失点を喫した第27節の強豪リヨン戦で、ムサ・デンベレの仕掛けにきりきり舞いにさせられた。以降、それまで順風だった昌子は、単独の仕掛けに躊躇するアタッカーがほとんどいないリーグ・アンならではの大きな壁にぶち当たった。

 間合いをとって下がりながらコースを切っていく、教科書どおりの対応だけでは通用しない。それは本人も理解しているはずで、実際、相手に前を向かせないように身体をつけて対応する工夫も見られるようになった。だが、それを相手に読まれて、あっさり裏を取られてしまうシーンもある。

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