決勝は「匂いの消えた」イングランド勢
対決。連日のCL大逆転劇に思う

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 サッカーの傾向を国単位で語ることが難しくなっていることを、リバプールとスパーズ、さらに言えば、スパーズに準々決勝で、これまたドラマ仕立て展開で惜しくも敗れたマンチェスター・シティは物語っている。各国サッカーのいいとこ取り。リバプールの監督(ユルゲン・クロップ)はドイツ人で、スパーズの監督(マウリシオ・ポチェッティーノ)はアルゼンチン人だ。

 イングランド勢同士の対決ではあるが、欧州的だ。島国の匂いはしない。EU離脱に揺れる英国だが、サッカーは、それとはまるで異なる方向を指している。そこに皮肉を見る気がする。離脱後のプレミアリーグはどうなるのか、11シーズンぶりの同国対決が実現したいま、逆に心配になる。

 しかし、それ以上に臭さが消えたチームといえば、バルセロナだ。リバプール、スパーズがいい意味での変化だとすれば、こちらは悪い意味で、となる。

 かつてそのサッカーは特別だった。欧州をぐるりと回り、バルサに辿り着けば、違いは歴然。他とは異なる良質で特別感のある匂いを嗅ぐことができた。だが、それが維持されたのは、ジョゼップ・グアルディオラが監督をしていた頃までだ。ルイス・エンリケ監督のもとでCLを制した2014-15シーズンあたりから、危うさが漂い始めた。

 エルネスト・バルベルデ監督率いる現在のバルサのサッカーは平凡そのものだ。他からいい要素を加えたというより、俗化した印象だ。チーム力も、リバプール、スパーズ、アヤックスの3チームが右肩上がりできているのに対し、バルサは右肩下がり。リオネル・メッシの年齢は上がっているにもかかわらず、逆にメッシ頼みの傾向が年々、増している。

 象徴的だったのは準決勝第2戦だ。試合開始早々、バルサはチャンスをつかんだ。左サイドバック、ジョルディ・アルバがリバプールのGKと1対1になった。誰もがシュートと思った瞬間、彼はけっしてフリーではなかったメッシにパスを送った。

 アルバは30歳のベテランだ。チームでは、メッシ、ルイス・スアレスを除けば、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツと並ぶ中心選手だ。その彼が、決定的なシーンでメッシを頼る弱気を見せた。バルサというチームの構造を見る気がしたプレーだった。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る