またもネイマール頼み? コパ・アメリカ開催国ブラジルに広がる不安 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳
  • translation by Tonegawa Akiko

 レアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオールはまだ18歳だが、すでにスペインのサポーターのハートをがっちりつかんでいる。しかし靭帯断裂のため、直近の代表戦には出られず、まだセレソンでプレーした経験がない。ケガからは復帰したところだが、彼をコパ・アメリカでプレーする23人に入れるかどうかは難しい問題だ。若き才能と比類なきスピードを求めて、代表経験のない選手を突然メンバーに入れるのか、それともすでに経験のある選手で安定を図るのか。

 ネイマールにあまりも頼りすぎているという意見もある。彼がいないとトップが機能しないのだという。だが、ネイマールがいたらいたで、彼はひとりでゴールを狙うエゴイストだという批判が出る。ボールはすべてネイマールに集められ、それがセレソンの弊害になっていると嘆かれる。

 ブラジルはすでにかつてほど強くないのだと言う者もいる。他の国は強くなったが、ブラジルは進歩していない。過去の栄光に囚われて、プレーのスタイルも旧態依然、非科学的だ。その現実を直視すべきだ、と。

 こうした疑問の数々に、チッチは答えることができないでいる。

 自国開催ということも、チッチにとっては頭の痛い問題だ。毎試合勝利しなければいけないというプレッシャーは、時にプラスに働くこともあるが、今のブラジルにとってはマイナス材料でしかない。

 セレソンはグループリーグの3試合中、2試合をサンパウロでプレーする。日本の皆さんは知らないかもしれないが、ブラジル人なら、それを聞けばピンとくる。サンパウロという街はセレソンにとっては厳しい場所だ。大都市で、経済的にも豊かで、教育水準も高く、何よりサッカーに関して目が肥えている。また、サンパウロのサポーターは批判精神が旺盛で、ひどいプレーをするセレソンには容赦がない。代表さえ見られればそれで満足という地方都市とは違い、結果の出せない代表に親しみを持っていないのだ。

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