長谷部誠に聞く仕事の流儀。「日本の過労の問題はしっかり考えないと」

  • 鈴木達朗●取材・文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

長谷部誠が語る仕事観・前編

 長谷部誠がドイツに渡ったのは2008年。ブンデスリーガのヴォルフスブルクに始まり、ニュルンベルクを経て、2014年に現在のアイントラハト・フランクフルトに移籍した。ドイツでのキャリア12年目を迎えた今季は、リーグ、ヨーロッパリーグで躍進するチームの中心選手として輝きを放っている。

 日本代表でも長らくキャプテンを務めていた長谷部だが、読書家で自ら書籍を出版し、2016年には日本ユニセフ協会大使に就任するなど、サッカー以外の領域の活動も高く評価されている。そんな長谷部に、これまで培った経験から導き出された"仕事観"について、じっくりと話を聞いた。

フランクフルトの中心選手としてチームをけん引する長谷部フランクフルトの中心選手としてチームをけん引する長谷部

――今回は少しサッカーから離れて、"仕事観"についてお話を伺えたらと思います。Jリーグ、ブンデスリーガでキャリアを積み重ねてきた長谷部選手から見た、日本とドイツの「組織での働き方」の違いはどこにありますか?

「まず、移籍金などもあるプロ選手の生活は、一般社会とはかけ離れている気がしますし、単純に比較するのはちょっと難しいです。でも、クラブの中で働くメディア部門やマーケティング担当の人たちと話す機会も多いですから、そういう点では一般の企業で働く方々と通じる部分もあると思うので、そちらの話をしようと思います。

 僕がさまざまなクラブを見てきて感じるのは、ドイツの人たちはすごく転職が多いということ。少しでもいい条件や、自分を高く評価してくれる場所だったら、サッと(所属先から)離れる。そういうところは、ちょっと日本とは違うなと感じます」

――日本でも転職をする人は増えているように感じますが、確かに「ひとつの会社でキャリアを終える」という傾向はまだ根強いようにも思います。

「日本は、いわゆる"企業愛"とか、会社に対する"思い"を大事にしますよね。そういう日本人の心はとても大事なものだと思います。それでも、『自分にとってチャンスだ』と思う場面に直面した時に、ためらいはあるかもしれませんが、すぐに決断して動くことは悪いことではない。そこはパーソナリティな部分も絡んでくると思います。

 なので、サッカーでもそうですが、『本当に国ごとの良し悪しがあるな』と感じます。一概に『日本はこう、ドイツはこう』とは言えない部分がありますから、僕も比較するのはあまり好きではないんですが(笑)。とはいえ、働き方ひとつ見ても、日本人のほうが勤勉です。ドイツでは『いかに休みを取るか。いかに休むために働くか』を大事にしていて、そこは『メリハリがある』という言い方もできますね」

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