2019.05.02

大久保嘉人、鬼門の地でデビュー戦ゴール。
欧州へ渡った平成の選手たち

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLO

 その点、大久保との邂逅は幸せだった。若者特有の反逆心が旺盛だった大久保は、記者全体を毛嫌いしていた。その偏見を崩し、にじり寄る。それに取材者として面白さを感じたし、懐に入ると、彼ほど純粋な男はいなかった。生意気だが、憎めない。自分が持っていかれそうな魅力があった。何度も対話し、戦友に近い関係を作ることで、その物語を書くことができた。

 その取材の仕方や書き方は、自分の原点ともなっている。その生き様にとことん迫って、物語を書き上げる使命というのか――。その出発点と言えるほどに、マジョルカでのあの日の試合の求心力は巨大だった。あるいは筆者は自らの人生を、彼らの限界を超えた戦いに仮託しているのかもしれない。

「サッカーは成功したときには、驚くほど達成感がある。ダメやったら、ずしっと重いもんが心に覆い被さってくる。どっちかよ。でも、難関を越えることで俺は強くなってきた。その瞬間が楽しいんよ。だから、サッカーはやめられん」

 大久保はそう言う。不器用だが、そこには真実がある。その純真はあの試合に集約され、そこにはちっとも嘘がないのだ。

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