「ニュータイプ」メッシはバルサをCL優勝に導くか?

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小澤 そうですね。ルーク・ショーが出られなかったとしても、ヴィクトル・リンデレフの右サイドバック起用は理解できません。だから、たとえラッシュフォードの開始1分のシュートが決まっていたとしても、ユナイテッドは普通に負けていたでしょうね。

 スールシャールが選手の配置をしっかり決めていないので、リンガード、ラッシュフォード、マルシャルが曖昧な動きをしていて、それにポグバもついていってしまったので、前線の守備がまったくハマっていませんでした。前半の半ばからポグバはイライラして、客席に聞こえるくらいの声で味方を怒鳴っていました。

倉敷 これは失敗でしたね。ユナイテッドの限界を見てしまったような気がします。それ以降のユナイテッドを見るにつけ、この試合で選手たちの気持ちがスールシャール監督から離れたような気もします。

中山 きっとフロント陣も、スールシャールでは来シーズンも厳しくなると見て、正式監督の契約をかわしたことを後悔しているのではないでしょうか。

倉敷 一方、バルサのエルネスト・バルベルデ監督の評価に関しては、結果を出しているもののサッカーがつまらないという意見もありますね。つまり、ヨハン・クライフが大好きだったバルセロナになかったものをバルベルデが持ち込んだという指摘が一部にあると思いますが、流通イメージとしてのバルセロナを考えた場合、これから先もバルサはこの路線を突き進むのでしょうか?

小澤 そうせざるを得ないでしょうね。ただ、ジョゼップ・マリア・バルトメウ現会長の体制ではこの流れが変わることはないでしょうけど、やっぱり現地のメディアでもバルサのアイデンティティが失われてきているという話はシーズンを通して出ています。クレの本音は、もっとボールを握って、相手をコントロールするような試合を見たいのではないでしょうか。

倉敷 たとえば、アルトゥールがもう少し成長して、来シーズン、フレンキー・デ・ヨング(アヤックス)が加わればバルサのサッカーに変化が起こる可能性はありますよね。

小澤 十分ありますし、カルラス・アレニャーにしても、もっと試合で使っていいレベルにあると思います。でも、メッシとスアレスが前線にいるので、そこで守備のフィルターがかからないという問題があります。彼らは自分の好きなタイミングでしか動かないので、そこについては、バルベルデでなくても、誰が監督をしてもコントロールできないでしょう。そういう意味では、メッシとスアレスがいる限り、サッカーの中身、とくに守備の仕方を大きく変えるのは難しいと思います。

倉敷 そうですね。結局、この第2戦もメッシの活躍で勝ったわけですしね。メッシが本気になっている時のバルサは本当に強いですね。

中山 現在のメッシは完全にニュータイプになりましたよね。相手のチームからすると、抑えようがないです。ディフェンスラインから中盤にかけての広いエリアで、相手の隙を探知しながらウロウロ歩いて、一瞬のスプリントで裏に抜けることもあるし、時にはボールを奪ってしまうこともある。そうかと思えば、ボランチの位置まで下がってシャビ・アロンソ張りにロングボールを供給するという展開力も見せるようになっています。

 もちろんメッシ以外の選手がカバーしているからできるプレーですけど、あれをやられると誰がメッシを見るのか相手が決めきれず、マークが曖昧なままになって結果的にメッシが自由にプレーできるという現象が起こります。どれほどの効果があるかわかりませんが、それこそ「トイレについて行くまで」誰かひとりをメッシに張りつかせて、10人対10人と考えて戦うという古い作戦を使ったほうがいいかもしれません。

倉敷 ディフェンスが際立って優れているチームはもうないのでメッシを止められるチームはないでしょうね。

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