アヤックスの先輩と後輩が激突するCL準決勝。欧州通の3人が展望した (2ページ目)

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中山 たしかに、第2戦で1-1に追いつかれたあとのアッレグリは何も策がなかったと言われても仕方ない采配ぶりでしたね。

倉敷 何もなかったと思います、意外でした。立ち上がりからユベントスはハイパワーのエネルギーを使っていましたが、こういう戦い方をすることにユベントスは慣れていません。それをせざるを得なかったところを見ると、アッレグリはアヤックスの若さに対して恐れを抱いていたのかもしれません。

 ジョゼ・モウリーニョは「もっとフィジカルを重視して戦えばユベントスは勝てた」とコメントしていますが、ユベントスはタフに戦う時間が長い試合をほとんどしていませんし、マリオ・マンジュキッチもジョルジョ・キエッリーニも欠場していました。この試合でのユベントスのフィジカルはブレーズ・マテュイディに象徴されていましたが、むしろアヤックスの方が彼にガツガツと当たりにいった。エムレ・ジャンに対してもぶつかっていった。

 かつてモウリーニョが率いたマンチェスター・ユナイテッドはマルアン・フェライニのフィジカルを使ってヨーロッパリーグ決勝でアヤックスを下しましたが、二の轍を踏まず、ユベントスのフィジカルな面のストロングポイントを逆に消そうと考えたエリック・テン・ハフ監督の采配は見事でしたね。 

中山 アヤックスはユベントスの中盤3人とセンターバックに対して、かなり厳しくプレスをかけていましたね。そのなかで感じたのが、ユーベのキエッリーニ不在です。第1戦のユーベは、左センターバックにレオナルド・ボヌッチ、右センターバックにダニエレ・ルガーニを起用していましたが、アヤックスは左へのパスコースを消すようにディフェンスラインにプレッシャーをかけ、ボールがユーベの右サイドに流れるような守備をして、それが奏功しました。右サイドバックのジョアン・カンセロのボールロストから、ダヴィド・ネレスが同点ゴールを決めたシーンがその象徴と言えるでしょう。

 それもあって、アッレグリはボヌッチとルガーニの位置を左右で入れ替えて、右サイドバックをマッティア・デ・シリオに変更して第2戦に臨んだと思うんです。結局、その策もうまくいきませんでしたが、もし左利きのキエッリーニがいたら左方向にもパスがもっと入ったと思うので、ボールの流れも違っていたのではないでしょうか。

倉敷 ボヌッチが戻っても、ユーベのセンターバックは足りなさそうですね。

小澤 是が非でもアヤックスのマタイス・デ・リフトを獲得したいところですよね。

倉敷 冗談じゃありませんよと言いたいところですが、デ・リフトは第2戦でアレックス・サンドロとルガーニを吹き飛ばして豪快なヘディングシュートを決めましたからね。あれでは高い移籍金がついても仕方ありません。クラブもあきらめているでしょう。ホントにあのインパクトはリバプールのフィルジル・ファン・ダイクにも負けない迫力でした。オランダ代表が強くなっているのも納得です。

 小澤さんは、この2試合の勝敗を決めるポイントはどこにあったと見ていますか?

小澤 若さのみならず、自信と論理に裏付けされたアヤックスの守備戦術が一番のファクターだと思います。特に第2戦のユベントスはマンマーク気味にハイプレスを仕掛けてくるアヤックスの守備を混乱させるべく、ボランチのエムレ・ジャンとボヌッチのポジションを入れ替えるなど序盤から対アヤックスの工夫を見せてきましたが、アヤックスはそこで上手くゾーンの守備に切り替えてマークを受け渡すなど若い選手たちが相手と戦況をよく見てプレーしていました。第2戦をホームで戦うことができたとはいえ、前半28分にロナウドが先制点を決めたことでもう少しアヤックスの選手たちから焦りが見えると思っていましたが、全くそういうことはありませんでした。その意味では選手たちをここまでに仕上げたテン・ハフ監督の手腕は見事だと思います。

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