トッテナムが笑い、マンCが泣いたVAR判定。大接戦の勝敗の分かれ目 (3ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 試合後、ファーディナンド氏が「試合前の状況を思い出してほしい。ケインが負傷離脱し、エースを欠くことになったトッテナムファンは非常に心配していた。ところが、ソン・フンミンはこの重責を背負い、見事に結果を残した。美しいゴールだった」と絶賛した。決定力の高さはもちろん、エース不在というプレッシャーのかかる試合で2ゴールを決めたメンタルの強さを褒めていた。

 それでも、勝負の差は紙一重で、試合の分岐点も複数あった。どちらに転んでもおかしくない大接戦であったのは間違いない。

 トッテナムのベスト4進出を決めたジョレンテのゴールについて、グアルディオラ監督は「VARを支持するが、別の角度から見ればハンドで、主審の見ていた角度ではハンドでなかった」と、VAR判定に注文をつけた。「優勝候補」と言われていたマンチェスター・Cとしては、第1戦でアグエロがPKを失敗したことも大いに悔やまれる。

 とはいえ、総合力ではわずかにトッテナムが上回っていたのも事実だ。今シーズンは選手補強がひとりもなく、シーズン前の下馬評は必ずしも高くなかった。加えて、第1戦でエースのハリー・ケインが足首のケガで離脱。第2戦は苦戦が予想されていた。

 しかし、トビー・アルデルヴァイレルトとヤン・フェルトンゲンのベルギー代表DFで編成するセンターバックの安定感や、相手プレスにも屈しない彼らのボールさばきのうまさを含めた「チーム全体の総合力」で言えば、今回はトッテナムに軍配が上がった。複数のフォーメーションを自在に使い分け、攻撃も抜群のコンビネーションで崩す「組織力の高さ」も、間違いなく勝因のひとつだ。

 エリクセンが「ジェットコースターのような試合だった」と形容し、マンチェスター・Cのフェルナンジーニョが「VAR、くそったれ」と指摘した今回の一戦。見どころ、物議を醸すシーン、ドラマが、この試合に凝縮されていた。

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