CL番長3人が読解!「戦術はロナウド」のユーべと若き才能集団の激突 (3ページ目)

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小澤 まずひとつは、ユベントスがエムレ・ジャンを右に置いて3対2を常に作っていたことに対して、アトレティコ・マドリーのデイエゴ・シメオネ監督が何もリアクションできなかった部分が致命的でした。これまでのアトレティコであれば、試合が始まってすぐに4-2-3-1に変えるなど、何らかの修正を施してうまくはめようとしたはずなのですが、そこができなくなったシメオネに少し不安を感じます。

 それとユベントスでは、ロナウドのハットトリックは別として、フェデリコ・ベルナルデスキが非常によかったという印象があります。レオナルド・スピナッツォーラもそうですが、とくにサイドを攻略するという意味では、エムレ・ジャンやジョルジョ・キエッリーニがフリーでボールを持ち運んでから縦パスを入れることができていたことで、ベルナルデスキがサイドでボールを受けられる状況になっていたと思います。

中山 アトレティコは2点リードした状況で第2戦を迎えたので、本来なら第1戦と同じように堅守という最大の強みを生かすような戦い方をしたかったはずです。しかし故障者や出場停止の選手がいたことで、結局、フアンフランを左サイドバックに回して、守備にやや不安を残すサンティアゴ・アリアスを右サイドバックに、同じく中盤の左にトマ・レマルを起用せざるを得ませんでした。ふたりは攻撃面で力を発揮する選手なので、そこにミスマッチがあったと思います。

 とくにレマルは、ユベントスの右サイド攻撃に対して序盤からジョアン・カンセロとエムレ・ジャンの間に立ってパスコースを消していたのですが、2失点目のひとつ前のシーン辺りから、カンセロに対して自分がアプローチするように変わってしまい、ファンフランとの守備連携に綻びが生まれてしまいました。おそらく前半から守備に追われて疲れてしまったのだと思います。もちろん、そういったわずかな隙を突いてくるユベントスもさすがですが。

倉敷 今シーズンのファイナルがアトレティコのホームスタジアムで開催されることが、精神的なプレッシャーになっていたのでしょうか? 戦うことに関して誰よりも力を発揮してきたのがシメオネという監督であり、そしてアトレティコは常に挑戦者としていくつもの壁を乗り越えながら、何かを成し遂げるために推進するチームという印象が強いのですが、今回はそれが感じられませんでした。

 この試合では、まずユベントスが先制点を取るまで総攻撃を仕掛け、アトレティコは守りを固めました。予想したとおりの展開だったと思います。ユベントスは先制すると今度はしばらく1-0のままで時計を進めようと、守備の比重を増やし、慎重な戦い方に変えました。そこでシメオネがどう動くのか?という部分がいちばんの興味だったのですが、結局、何もしなかった。納得がいかない。不思議でしたね。

中山 第2戦のアトレティコは、珍しく挑戦を受ける側の立場でしたからね。いつもと同じスタンスで試合に臨んでいたつもりでも、どこかで慣れないことをしているという意識もあったのかもしれません。

倉敷 アトレティコがいつまでも攻撃のアクセントをつけないので、ロナウドにとってはいよいよレアル・マドリーでプレーしていたときのように、攻撃だけに専念して構わない、という状況が生まれました。もともとマッシミリアーノ・アッレグリ監督の心にそのプランはあったと思いますが、ここまで「戦術はクリスティアーノ・ロナウド」というサッカーを見たのは久しぶりでした。今シーズンのユベントスにそこまで極端な形は一度もなかったはずです。アトレティコとしては自ら最も守りにくい展開を作り出してしまったわけですね。

 さて、老貴婦人というあだ名も持つユベントスと若いアヤックスの対決はどうなるでしょうか。4月10日の第1戦はアヤックスのホームで、第2戦は4月17日にトリノで行なわれます。過去の対戦成績はユベントスが6勝4分2敗で上回っています。

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