CL番長3人が読解!「戦術はロナウド」のユーべと若き才能集団の激突 (2ページ目)

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倉敷 たとえば最近流行りの「ペップ流サッカー」には、サイドの選手が外に張るよりも内側に入ってプレーをしたり、攻め上がるときにインナーラップするプレーが特徴としてあると思いますが、ペップ流であってもテン・ハフは、ウイングを効果的に使って外側から展開する伝統的なサッカーにこだわりを見せ、そこに他のチームとの違いを生み出そうとしているようにも見えるのですが、いかがでしょうか?

小澤 そこは感じます。とくに左サイドはウイングのネレスが外に張った時に、タグリアフィコが内側にインナーラップをする形が徹底されていると感じますし、サイドバックの選手が相手のポジショニングを見ながら、外なのか内なのかを判断してプレーを選択できていることが、アヤックスのサッカーの根幹を支えているのではないでしょうか。

 それと、アヤックスのインテンシティの高いサッカーを見てわかったことは、各選手が「どのタイミングで、どのような角度からプレッシングに行くのか」という部分が細かくデザインされていることでした。そうでなければ、あそこまで選手が思い切ってプレスに行けません。逆に、マドリーは選手個々にディティールを委ねているために、ひとつひとつのプレスに遅れが出てしまいます。その違いは明確にあったと思います。

中山 僕もアヤックスを見ていて感じたのは、「サイドの使い方」という点でした。サッカーの原理原則からすると、ゴールが中央にある以上、最終的にどんな形でも守備側は中央を固めて守りたいという性質は変わりません。そうなったとき、サイドから攻められた守備側はゴールに対して横向きに守ろうと考えた場合、やはり攻撃側はサイドから攻めるのが最も有効な手段になります。

 その点で、アヤックスはウイングやサイドバックが両サイドにある「廊下」の部分を有効に使って幅が広いサッカーができていて、もちろんサイドバックのインナーラップも見せますが、必ず誰かが大外でポイントを作っています。逆に、ダニエル・カルバハルやセルヒオ・レギロンがサイドの攻防で敗れたことが、マドリーの敗因のひとつになったのだと思います。もちろん、第2戦の前にクラシコで連敗を喫したショックや早い時間帯でルーカス・バスケスが負傷交代したことも、マドリーの不調に影響したとは思います。

 それと、これはポルトの話をしたときにも触れましたが、最近ハーフスペースを使ったサッカーがクローズアップされているなか、最終的にそれに対抗するヒントは大外の使い方にあると感じていて、アヤックスはそのよいサンプルを見せてくれている気がします。また、第2戦では1トップのタディッチが大活躍したこともサイドの攻防に影響したという印象があって、「中央でポイントを作れるからサイド攻撃がより活性化した」印象を受けました。

倉敷 たしかにそうですね。アヤックスは、早くから育成が高く評価されていたクラブでしたが、「ラップトップ系の監督」がその成長の過程に、戦術的トレンドやそのトレンドに対抗する手段などを加えてレベルアップさせていることが躍進につながっています。成長過程にある他の若いチームには特に良いお手本でしょうね。

 一方、敗れたマドリーはその後にソラーリ監督の解任が決まり、ジネディーヌ・ジダン監督を呼び戻すというあっと驚く方法で再起を図っています。ジダンが会長にどんな約束をさせて復帰を決意したのかは想像の域を出ませんが、来シーズン、どのようなチームで巻き返しを図るのか楽しみです。

 では次に、ユベントスの勝ち上がりをおさらいしておきましょう。おふたりはどのような印象をお持ちですか?

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