CL番長3人が読解!「戦術はロナウド」のユーべと若き才能集団の激突

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蹴球最前線──ワールドフットボール観戦術── vol.61

 サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎――。この企画では、経験豊富な達人3人が語り合います。前回に続き、テーマは欧州CLの注目カード。悲願のビッグイヤー獲得のためにクリスティアーノ・ロナウドが加わったユベントスと、有望な若手が躍動するアヤックスの対戦を解析します。

――お三方にプレビューしていただいているチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝ですが、今回はアヤックス対ユベントスについて、両チームのラウンド16での戦いぶりを振り返っていただきながら、今回の対戦を展望していただきたいと思います。倉敷さん、レアル・マドリーに勝ったアヤックスの戦いぶりは見事でしたね。

チャンピオンズリーグで毎シーズン活躍するロナウドチャンピオンズリーグで毎シーズン活躍するロナウド倉敷 第1戦のホームゲームに1-2で敗れたアヤックスが、そのビハインドを跳ね除けてなんとベルナベウでの第2戦に1-4で勝ちました。長い間ヨーロッパで結果を残せないでいたチームがこのステージで逆転、ましてやその相手がCL3連覇中のレアル・マドリーとなれば快挙と言っていいでしょう。

 2000年代前後からアヤックスの低迷が始まった背景にはボスマン裁定が大きく関係していたわけですが、今シーズンの主力を見ると、ニコラス・タグリアフィコ、ダヴィド・ネレス、そしてラウンド16第2戦で大活躍したドゥシャン・タディッチなど、他のクラブから買って補強した選手が少なくありません。つまり、優秀なユース育成に加え、補強にそれなりのお金を使えるまでにクラブの財力が復活してきた点が、躍進の大きな要因になっていると思います。

 その点については間違いなくフロントの努力があったと思いますし、現場レベルの話で言えば、ペップ・グアルディオラがバイエルンを率いていた時代に、バイエルンのBチームを指導していたエリック・テン・ハフ監督の経験、そしてホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督のアシスタントを経験しているアルフレッド・スクローダーコーチの存在も大きいのではないでしょうか。現在のアヤックスは、いわゆるラップトップ系の指導者たちによって新しい時代を迎えていると感じます。

 小澤さんは、ラウンド16第2戦におけるアヤックスの戦い方について、どのように見ていますか?

小澤 基本的に、第1戦と同じようにインテンシティを高くして試合に入っていたと思います。とくにペップ流派の監督が大事にしている部分として、ボールを失ってからいかに高い位置で、なおかつ少ない時間でボールを回収できるか、攻から守のネガティブトランジションを意識したサッカーができていました。ああいったアグレッシブさは若いタレントが多いアヤックスならではのものだと思いますし、第2戦ではそれが存分に発揮されていました。

 対するマドリーは、サイドバックが上がったときはトニ・クロースとルカ・モドリッチが下りてくるパターンしかないので、アヤックスが中盤をほぼマンマークで当ててきたことによって、マドリーはスペインで言う「ボールの出口(サリーダ・デ・バロン)」がない状態に陥っていました。

そうなった場合、マンチェスター・シティ、バルセロナ、あるいはラ・リーガのベティスなどがやっているように、中盤を省略してセンターバックやゴールキーパーからのロングフィードでワントップが収めるという対処法があるわけですが、サンティアゴ・ソラーリ監督率いるマドリーにはそこまでの戦術はありませんでした。

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