革命進行中のバルサの社会貢献。難病の少年をVRでカンプ・ノウへ招待 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 すでに現在でもクラブのメガストアは、1平方メートル当たりの収益は世界のどのナイキストアをも上回っていると、バルサ関係者は言う。これが今のようなスーパーマーケットみたいな店舗から、アップルストアのような雰囲気になり、ただ商品を売るのではなく「体験」を提供する施設になる。

 バルサのミュージアムも、関係者によればスペインではすでにプラド美術館とソフィア王妃芸術センター(マドリード)に次ぐ集客力を誇る施設だが、スタジアムツアーのために急ごしらえしたようなものではなくなる。

 これらのリノベーションは、訪れる人々が滞在する時間をもっと長くすることを目的としている。理由のひとつは、バルサのホームゲームに外国から来る観客が増えていることだ。

 10年前なら、観客のほぼ全員が地元の市民だった。クラブのソシオ(会員)は、観戦しない試合の座席を友人や近所の人に譲っていた。地元っ子は、キックオフの後にスタジアムに来て(どちらかと言えば関心の薄いチャンピオンズリーグの試合では観客の2割が遅れて到着する)、試合が終わる前に席を立つ。

 しかし今、ソシオは余ったチケットをバルサのウェブサイト上で売ることができる。チケットを買うのは、ほとんどが観光客だ。バルサのホームゲームの観客数は平均7万8000人で、そのうち3万人が外国人ということもある。外国人観光客がバルサの試合を見るのは、人生でその1度きりということが多い。

 観光客が何かにつけて酒を飲みたがるのは当然のことだ。しかし今のスタジアムには、ゆっくり腰を落ち着けて時間を過ごせる場所がほとんどない。試合が終われば観光客はスタジアムを出て、街なかのバルなどに行ってしまう。

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