バルサの独自戦略が進化。「カフェインでパスの正確性を上げる」 (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 2005-06シーズンにバルサがチャンピオンズリーグを制したとき、あるスター選手がロッカールームにフォアグラを持ち込み、「自分にはこれがいいんだ」と言い張った。しかし、規律については誰よりも厳しいジョゼップ・グラウディオラが2008年に監督に就任して以降、そんなことは考えられなくなった。グラウディオラは、選手たちに毎日、朝食と昼食を一緒に食べることを義務づけた。

 グラウディオラが2012年にチームを去ると、彼が設けたルールは一部だけが残り、そのほかは緩くなった。バルサはしだいに、それぞれの選手のニーズに合わせて栄養を調整するようになっている。

 しかもバルサは、個々の選手がプレーによってどれだけエネルギーを消耗しているかを追跡している。汗の量も選手ごとに違う。脂肪や炭水化物の燃焼量も違う。やがて選手たちは、それぞれ自分向けに作られた栄養ドリンクをハーフタイムに口にするようになるだろう。

 バルサの医療スタッフとゲータレード・スポーツ科学研究所の専門家が共同で作成したブックレット『フットボールのためのスポーツ栄養学』は、何がフットボール選手にいい影響をもたらすかを追求した栄養学の研究を網羅している。

 たとえば、意外にもカフェインは身体と認知と技術のパフォーマンスを向上させることがわかった(パスの正確性も上がるという)。トレーニング前の朝食でお茶やコーヒーをとることや、試合当日にカフェインの入ったスポーツドリンク(あるいはガム)を口にすることも推奨されている。

 選手たちは、硝酸塩を摂取するためにビーツのジュースを飲むことも勧められている(キックオフの前に2杯飲むと、さらにいいらしい)。試合が立て込んでいる時期には、1日にタルトチェリー100個分に相当するものを摂取するようにも言われている(まるで大食い選手権のようだが)。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る