バルサの独自戦略が進化。「カフェインでパスの正確性を上げる」 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「選手はみんなトレーニングのときに、動きを記録するチップを身に着けている。トレーニングで得られたデータから、選手がどれだけストレスを抱えているかを予測し、ケガを予知できればと思っている」

 しかし、そのためにバルサは、ほとんど自分たちだけでデータベースを構築しなくてはならない。今の医学の力では、フットボール選手がケガをするかどうかなど予測することは、まず無理だ。

 一流のフットボール選手は、医療を受けるニーズが恐ろしく高い。プロ選手のケガの3分の1近くは筋肉系で、ハムストリングの負傷が最も多い。一般的な医療の研究では、選手の問題には対処できない。一般の人はハムストリングを傷めても、まだ仕事に出かけることはできる。

 バルサも自前の研究でやれることは限られている。クラブが持っている成人男性の一流フットボール選手のサンプルは、25人程度にすぎないからだ。他の一流クラブは、自分たちの医療データを共有したがらない。そこでバルサは、筋肉や腱を研究する約40の科学者のチームと提携している。
 
 バルサが取り組んでいるのは、どうしたら選手に対するケアを個々のニーズに合わせたものにできるかだ。外から見える負荷を測定することは比較的簡単だ。最近、何試合に出場し、どれだけ負荷をかけてプレーしたかを調べればいい。

 しかし、バルサがやろうとしているのは、内面的な負荷を測ること。心理学や生理学、生物力学などの観点から、選手が外的な負荷にどう反応しているかを調べる。トップチームのドクターであるリカルト・プルナは、選手の遺伝子のプロフィールから特定のケガを予測できるかどうかという研究を行なっている。

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