バルサ監督が語るデータ活用術。
「メッシに伝えること、任せること」

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 現在のところ、バルサの分析チームは、選手たちが優位をつくり出す助けにはあまりなっていない。むしろその逆で、分析担当者はインテリジェントな選手のプレーを観察することでフットボールへの理解を深めている。

 たとえばバルサのMFセルヒオ・ブスケツは、相手選手を自分のほうに引きつけ、その分空いたスペースにチームメイトを走り込ませるのがうまい。仮にブスケツがコーチのアドバイスを聞けるイヤホンを着けていたとしても、こうしたプレーは助言を受けたからできるものではない。

 インテリジェントな選手を見つけ出すにはどうすればいいか。あるバルセロナ関係者は、選手の脳の動きを追跡できるようになる日を思い描いている。しかし今は、もっともインテリジェントな選手(たとえばブスケツ、アンドレス・イニエスタ、メッシ)とは、ピッチの中でほぼ常に適切な選択をしている選手のことだろうと、分析担当チームは考えている。

 そうなると、他の多くの場合と同じように、分析担当チームはヨハン・クライフが50年近く前に成し遂げたことを越えていないことになる。

 バルサのフットボールの父であるオランダ人のクライフは、70年代に選手としてバルサでプレーし、1988~1996年に監督を務め、このクラブが今も続けているパスサッカーをつくり出したと言っていい人物だ。どの選手が正しい方向にターンしていたかという点について、クライフは何時間も熱弁を振るうことができた。一方で、選手の体格やスピードにはほとんど関心がなかった。

 いまデータ分析担当者の仕事の大半は、相手チームのビデオを見て編集することだ。もう10年もすれば、この仕事は自動化できるのではないかとバルサは考えている。そうなれば人間は、動画を分析して相手の弱点を探すことに、もっと時間を割くことができる。

つづきを読む>>

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る