バルサ監督が語るデータ活用術。「メッシに伝えること、任せること」 (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「こういうのはデータと呼ぶほどのものでもない」と、バルベルデは言う。「ビデオを見ていれば、繰り返し出てくるパターンがあることに気づく。それだけのことだ」

 だが、相手チームのほうもバルサの傾向を研究していると、バルベルデは言う。2月のレアル・マドリード戦でバルサがFKを獲得したとき、レアル・マドリードのDFマルセロは低めのシュートを阻むために「芝に突っ伏していた」。

 バルサのGKも、相手選手のシュートの傾向についてアドバイスを受ける。「GKコーチは、相手選手がGKの正面でフリーになったときの模様を撮ったビデオを見せる」と、バルベルデは言う。「ある選手は蹴る方向が決まっていたり、別の選手は正面に強いシュートを打ってきたりする。このあいだ対戦した(ビルバオのイニャキ・)ウィリアムズがいい例だ。あの選手は正面にとても強いシュートを打ってくるから、GKは動かずに彼の真ん前に陣取っていなくてはいけないんだ」

【マッチデータ】

 バルサのデータ分析担当者たちは、チームを強くするための数字を探し続けて日々を送る。パス成功率、選手の走りの最高スピード、それぞれの選手が動いているときのヒートマップ......。

 しかし、データ分析チームと話をしていると、彼らは自分たちの仕事に大きな疑念を持っていると口にする。ある分析担当者は、チームの勝利に貢献したことはないと思っていると僕に言った。さらに細かく尋ねると、彼は、貢献しているとしても「0.01%くらい」と言った。

 監督やコーチもほとんど何もできないと、彼はつけ加えた。バルベルデも同じ意見だ。「データは決め手にならない。いや、まだ決め手になっていないと言うべきかもしれない」。しかし、バルサはフットボールの未来を探るうえで、データが決め手になりうる日を思い描いている。

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