バルサ監督が語るデータ活用術。「メッシに伝えること、任せること」 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

「遠くにいる選手に向かって叫んでも、彼らには聞こえない。近いほうのサイドにいる選手に叫んでも、同じことだ。プレーが途切れない競技だから、監督にやれることはほとんどない。少なくともバスケットボールに比べれば、監督の影響力ははるかに小さい。交代枠は3人しかなく、試合が(タイムアウトなどで)止まることもない。だからフットボールは選手のものだ。45分にわたり、ノンストップで、選手は自分で決断しなくてはいけない。優れた選手は、私よりもゲームをしっかり分析している」

 そこまで話して、バルベルデは表現を変えた。

「いや、『分析』と言うより、『解釈』と言うべきだろう。この2つは違う。ピッチでは考えている暇がない。プレーしなくてはならないから」

 リオネル・メッシがいい例だ。彼はどんな試合でも、最初の数分間を「解釈」に使っていると、バルベルデは言う。

 その時間のメッシはボールにはかまわず、相手DFの間を偵察するかのように歩き、各選手のポジションを頭に入れている。

「時間が進むと、彼は少しずつゲームに入ってくる。そのときには、相手チームの弱点を完璧に把握している」と、バルベルデは言う。

 バルサの選手たちは監督に、非常に具体的なアドバイスを求めてくる。バルベルデの言葉を借りるなら、選手が欲しがるのは「ソリューション(答え)」だ。

 たとえば、メッシはこの1年で2度にわたり、FKのときに相手が作る壁の下にボールを通して、ゴールネットを揺らした。いずれも、壁を作っている選手はみんなジャンプするだろうと、スタッフが伝えたときだった。

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