バルサ新プロジェクトの全貌を独占取材。「サッカーの未来」とは? (5ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 バルサはフットボールのライバルチームよりも、アメリカのスポーツチームとの間でアイデアを交換している。アメリカンフットボールのサンフランシスコ・49ersや、バスケットボールのゴールデンステート・ウォリアーズなどだ。

 バルサの理事のひとりでイノベーション・ハブを担当するマルタ・プラナに言わせれば、バルサは「スポーツ界のシリコンバレー」になりつつある。ただし、ひとつ大きな違いがある。シリコンバレーにはテクノロジー面の革新を生み出すために失敗を奨励する空気があるが、バルサはそういうわけにはいかない。バルサにとっては、現実の試合で2連敗したら大変なことだ。将来の革新のために現在のパフォーマンスを犠牲にすることは、バルサにはできない。

 それでもバルサは、大半のフットボールクラブよりは長期的な視野でものごとを考えている。昔から理事を務めてきたカタルーニャの商人の家と、14万5000人いるソシオ(会員)の大半が、クラブを共同保有し、生涯にわたってクラブに寄り添いつづける。未来のフットボール選手について彼らが考えるのは、当然の成り行きだ。

 バルサのスタッフのひとりが僕に語ったところでは、イノベーションの難しい点は、アイデアを生み出すことではない。アイデアを実行することだ。もしバルサにそれができれば、メッシとそのチームメイトは大きな利益をこうむる。さらに、その努力はスポーツ全体を変える。

 バルサが取り組むイノベーションの先に何があるのかは、まだ誰にも完全には見えていない。だが、監督のバルベルデに話を聞いたり、データの活用法や移籍戦略、さらには本拠地カンプ・ノウの再開発プロジェクトに至るまで、さまざまな角度から取材を進めていくにつれて、バルサがめざす「未来のフットボール」の輪郭が少しずつ見えてきた。

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