鎌田大地、動けず。シント・トロイデンが
逃がした魚は大きかった

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 戦前の1週間、ベルギーのメディアは両チームの話題であふれており、まるで"決勝戦"の雰囲気が生まれていった。

 そんなビッグマッチで、ゲントがG5(ベルギーリーグの5大クラブ)の底力を発揮した。シント・トロイデンのマンツーマンに対してゲントは個の力で凌駕し、ピッチの到るところで相手を上回っていた。シント・トロイデンの選手たちが繰り返したミスは自滅のように見えるが、実際にはゲントのプレスによって強いられたミスだったと思う。

 結果、ゲントが2-0で勝ち、勝ち点を50に伸ばしてレギュラーシーズンを5位で終えた。一方、シント・トロイデンは7位。わずか勝ち点3の差だが、ゲントとシント・トロイデンの間には大きな差があることを痛切に感じさせた試合だった。

その差のひとつは、シーズン終盤の底力だろう。ゲントの追い上げは見事だった。残り4試合となった時点で、彼らに課せられた使命は4連勝だったが、しっかりそれを成し遂げた。一方のシント・トロイデンは、ラスト3試合で勝ち点1しか奪えず失速した。

 試合後のピッチ上は、まさにカップ戦の決勝戦を終えたようだった。勝者のゲントが喜びを爆発させていたのに対し、シント・トロイデンはピッチに倒れ込む者、うなだれたままずっと動かない者、ゲントの選手に掴みかかっていく者もいた。

 それでも、彼らは立ち上がらないといけない。シント・トロイデンの選手たちはセンターサークルの中央で円陣を作り、主将のジョーダン・ボタカが「悔しくてしょうがないけれど、俺はみんなを誇りに思う」と語った。

 そんななか、鎌田大地はひとりだけベンチに座って円陣に加わらず、バスタオルを頭の上から被ったまま動けなかった。その間にチームメイトはピッチをゆっくり周ってファンに挨拶していたから、2分か3分か、それほど短い時間ではなかったはずだ。ともかく、鎌田は動けなかった。

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