乾貴士、ホーム初得点。古巣監督も「あいつはくそったれだ」と祝福 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「エイバルとの試合がイプルア(エイバルのホームスタジアム)でできないのは残念。イプルアに帰りたかった。ベティスはシーズンの終わりに(イプルアでエイバルと)対戦があるけど、アラベスは(エイバルと)もうホームでしか戦えなかったからね」

 この日のエイバル戦は、乾にとって特別な試合だった。古巣であり3年間を過ごした思い出の地というだけではない。乾がベティス移籍を決断した理由のひとつは、メンディリバルに出会い、その新たなサッカー観に触れたことにあった。声をかけられたベティスでも新たな経験ができると期待して、大好きなクラブを離れたのだ。

「勝ち点1だったけど悪くはないと思うし、いい試合はできたと思う。欲を言えば勝ちたかったけど、個人的な感想で言えば、引き分けでよかったかな」

 そんな愛するクラブとの対戦だったからこそ、いつもはチームの勝利を一番に望んでいる乾が、引き分けに満足感を抱いていた。

 欧州では、古巣との対戦で、たとえゴールを挙げても祝福せずにそっけない態度をとる選手も多い。だが、冒頭のメンディリバルの話のように、乾は自らのゴールを祝福した。その理由について乾は次のように語った。

「ホームなので。イプルアなら祝福はやらなかったけど、メンディソロサでの初ゴールだったので、そこは祝っておきたいと思いました」

 ゴールアナウンスが「Inuiiii(イヌイィィィー)」と声をかけると、スタンドからは「takashiii(タカシィィィー)」の声が。そんな掛け合いが何度も何度も繰り返された。すでに乾がアラベスサポーターの信頼と愛情を手にしていることがわかった。それだけでなく、乾がメンディリバルをはじめとした古巣エイバルの元同僚たちと、変わらぬ友情を保っていることを感じさせてくれた試合だった。


2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る