たった1年で12倍以上の価値に。冨安健洋の株が欧州で上昇中だ (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 この駆け引きが、見ていて面白かった。冨安が思い切って前に行くこともあれば、味方のアレクシス・デ・サートをデンスウィルに付かせて、代わりに冨安がデ・サートの担当する相手MFをマークすることもあった。

 いずれの場合でも、冨安の裏にはスペースが生まれてしまう。だが、味方がそれらをカバーして、クラブ・ブルージュの侵入を許さなかった。

 強豪相手に瞬時の判断を繰り返しながら、味方に指示を出したり、指示を受けたりしながらコミュニケーションをかわす動きは、次第にオートマティズムなものへと昇華していった。結果は0-1で負けてしまったが、冨安にとってはとても濃い90分間だったと思う。

 こうした高いレベルの試合を繰り返すためにも、現在5位のシント・トロイデンはレギュラーシーズン残り2試合で6位以内を死守し、「プレーオフ1」への進出を果たしたいところだ。ベルギーリーグ上位6チームで行なわれるプレーオフ1は、毎試合いずれも非常にインテンシティの高いものになる。

 それは冨安のみならず、シント・トロイデンでプレーする日本人選手にとって、成長を確認・促進する場となるだろう。開幕2戦目にゲンク(現在1位)との対戦でマッチアップして苦労したFWレアンドロ・トロサールと再戦した時、果たして冨安がどこまでやれるのか、ぜひ見てみたいと思っている。

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