欧州CLマニアック鼎談。達人たちが注目したのは物議をかもしたVAR

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蹴球最前線──ワールドフットボール観戦術── vol.55

 サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎――。この企画では、経験豊富な達人3人が語り合います。今回は欧州CLの注目カードについて分析。有望な若手がそろうアヤックスと、4連覇を狙うレアル・マドリーの対戦をピックアップした。

――チャンピオンズリーグのラウンド16の第1戦が終わり、いよいよ第2戦を迎えます。そこで今回は第1戦の結果を踏まえて、注目カードについてお三方に第1戦のレビューと第2戦のプレビューをしていただきたいと思います。まずは、1-2でレアル・マドリーがアウェーで勝利したアヤックスとの一戦(2月13日)からお願いします。

VAR判定で、ゴールが取り消される微妙なシーンもあったアヤックス対レアル・マドリーVAR判定で、ゴールが取り消される微妙なシーンもあったアヤックス対レアル・マドリー中山 アヤックス戦ですからね。まずは倉敷さんからたっぷりと第1戦のお話をしていただきましょう。

倉敷 個人的にはアヤックスがラウンド16まで勝ち上がり、レアル・マドリーとハイレベルで渡り合えたことだけで感無量です。フランク・デ・ブールが監督の時代は国内リーグでこそ連覇を続けましたが、監督からして相手に敬意を払いすぎてヨーロッパではまったく意気地がありませんでした。しかし、今シーズンはドイツでペップに刺激を受け、勉強したエリック・テン・ハーグ監督によって見違えるほど戦えるチームになりました。

 ただ、チーム状態はグループステージの頃と比べると少し落ちていた様子です。1月にフレンキー・デ・ヨングがバルセロナに(来季から)移籍することが決まったことで、自分の携帯電話が気になって仕方ない選手たちもいたそうで、少し集中力を欠いていると現地の友人が苦笑いしていましたが、若い選手が多いので仕方ないですね。

 そんな背景もあってかフェイノールトとのクラシカーでは6-2という大差で負けました。でも、それがかえってよかったのかもしれません。このマドリー戦では、謙虚でいながらアグレッシブなグループステージの頃のアヤックスがいました。試合の入り方もすばらしかったし、とくに前半に生み出したいくつもの決定機に興奮したファンも多かったでしょう。

中山 そうでしたね。前半はほぼアヤックスのペースで試合が進み、ドゥシャン・タディッチのシュートがポストに当たってしまったシーンもありましたし、左から崩してフリーのハキム・ジィエクがゴール至近距離からシュートを放ち、ティボー・クルトワのファインセーブで防がれたシーンもありました。そして、この試合最大のトピックとも言えるニコラス・タグリアフィコの幻のゴールです。あのVAR判定には、倉敷さんも言いたいことがたくさんあるのでは?(笑)

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