ネイマール不在でもパリがCLで勝利。今季は悲願達成のチャンスだ

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by Getty Images

 結局、トゥヘルは限られた選択肢のなかから4-2-3-1を採用。戦術練習もままならない中2日という日程で決断を下し、それを実行できるだけの戦術の浸透がなされていることこそが、今シーズンのパリの最大の強みと言えるだろう。

 仮にユナイテッドに先制されて、パリが追う展開になった場合は、右ウイングバックにダニ・アウヴェス、左にベルナト、前線は右からディ・マリア、ムバッペ、ドラクスラーと並べ、3-4-2-1の攻撃的布陣にシフトチェンジする。おそらくトゥヘルなら、そんなプランBも用意していたはずだ。

 今シーズンのCLで優勝候補とされるバルセロナ、レアル・マドリード、ユベントス、あるいはマンチェスター・シティやリバプールにしても、ここまで豊富な戦術バリエーションは持ち合わせていない。

 パリはカタール資本となって以来、過去6シーズン連続でCL8強の壁を乗り越えられずにいる。あらためて振り返ると、ロラン・ブラン監督が率いた2013-14シーズンから5シーズン連続で4-3-3のみで戦い続けた結果、ズラタン・イブラヒモヴィッチ(現ロサンゼルス・ギャラクシー)や昨シーズンのネイマールなど、大一番で大黒柱を欠いたときにチーム力が一気に低下し、それが原因で敗退するという苦い歴史を繰り返してきた。

 そういう意味では、トゥヘル就任によって新しく生まれ変わった今シーズンのパリは、単なるタレント軍団の域を超え、CLを勝ち取るために必要ないくつもの手段も手にしたと見ていい。監督と選手の関係が好循環な今シーズンこそ、実は悲願達成のチャンスかもしれない。

 パリのホーム、パルク・デ・プランスで行なわれる第2戦は3月6日。累積警告のポグバが欠場するユナイテッドとのリターンマッチで笑うことができれば、次はいよいよ、パリにとって乗り越えなければいけないCL8強の壁に挑むことになる。

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