ネイマール不在でもパリがCLで勝利。今季は悲願達成のチャンスだ

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by Getty Images

 スタメンは、GKジャンルイジ・ブッフォン、4バックは右からティロ・ケーラー、チアゴ・シウヴァ、キンペンベ、フアン・ベルナト。ダブルボランチはマルキーニョスとマルコ・ヴェラッティを組ませ、2列目は右からダニ・アウヴェス、ユリアン・ドラクスラー、ディ・マリア、そして1トップにムバッペという11人である。

 そんななか、トゥヘルがポイントにしたのが、ユナイテッド最大のキーマンで、左インサイドハーフを務めるポール・ポグバを封じ込めることだった。

 そこで、191cmという高身長のポグバに対し、165cmのヴェラッティとのミスマッチを考慮して、通常CBでプレーする183cmのマルキーニョスを右ボランチに配置。過去にこの2人がダブルボランチを形成するときは右にヴェラッティが入ることが定番だったことを考えると、その狙いは明確だった。

 事実、前半20分前後にマルキーニョスのマークを嫌い、ポグバがアンデル・エレーラと左右のポジションを入れ替えたとき、マルキーニョスもヴェラッティと入れ替わってポグバをマーク。それに気づいたポグバはしばらくして左サイドに戻ったが、そのシーンからもトゥヘルの狙いは見て取れた。

 さらに、右ウイングに元々右SBで守備力も高いダニ・アウヴェスを起用することで、右サイドの守備力を強化。これは、右SBケーラーとともに、ユナイテッドの左ウイングを務める好調アントニー・マルシャルを封じることにもつながった。

 この策は見事に功を奏し、ポグバは前半に1度だけ個の力で右サイドを突破してチャンスを作ったものの、それ以外は見せ場を作れないまま。そして、89分に2枚目のイエローカードをもらって退場処分となり、次の試合は出場できなくなった。また、ハーフタイムに負傷交代したマルシャルも、沈黙したままピッチを去っている。

 まさに監督采配が見事に的中したわけだが、ここで見逃せないのが、マルキーニョスのボランチ起用も、4-2-3-1の選択も、負傷者が続出したことで突発的に考案した苦肉の策ではなく、あくまでも今シーズン積み上げてきた戦術バリエーションのひとつだったという点である。

 たとえば4-2-3-1にしても、昨年10月に頻繁に使った布陣ではあるが、11月以降3バックをメインに採用するようになってからは、CLおよび国内リーグ戦では封印されていた布陣。また、カバーニの負傷がなければ、このユナイテッド戦ではムバッペと2トップを組ませる3-5-2(3-1-4-2)、もしくは最近メインにしていた4-4-2を採用すると見られていた(直前の国内リーグ戦でも4-4-2)。

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