プレミアの古豪を復活させた「中国マネー」と大物代理人の蜜月 (2ページ目)

  • ジェームス・モンタギュー●取材・文 text by James Montague 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 国外クラブのオーナーシップにも同様の動きが見られた。ミラン、インテル、ニース、ADOデン・ハーグ、エスパニョール、サウサンプトンなど、多くの欧州クラブが中国人に買収され、マンチェスター・シティやアトレティコ・マドリードらは、多くの株式を中国企業に売却している。


 そしてイングランドのミッドランド西部地方では、ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン、アストン・ヴィラ、バーミンガム・シティ、そしてウルブスと、英国第2の人口を誇るエリアのメジャークラブの多くが中国人の手に渡った。

 米誌『フォーブス』は2017年、フォーサン・グループのグオ・グアンチャン会長の総資産を86億ドル(約9494億円)と推定し、世界で226番目の長者と定めている。

 彼は一代で莫大な富を築き上げた。貧しい家庭に生まれ育ちながら、勉学に励み、奨学金を得て大学へ進学。1990年代に中国政府が起業活動を奨励し、国外からの投資に門戸を開き始めると、グオは友人たちと共に外国企業に投資のアドバイスをする会社を設立した。そこで成功の礎を築き、巨大企業となるまでに成長させたのである。

 フォーサン社はウルブスを買収すると、ケニー・ジャケット、ワルテル・ゼンガ、ポール・ランバートと1年間で3人の指揮官を更迭。経営権取得後の2シーズン目に入る前の2017年5月に、ヌーノ・エスピーリト・サント監督を招聘した。その裏には、現在のフットボール界で大きな力を持つスーパーエージェント、ジョルジュ・メンデスの存在がある。このポルトガル人との密接なつながりが、ウルブスの"フットボール革命"を可能にしたのだ。

 クリスティアーノ・ロナウドやジョゼ・モウリーニョらの代理人として知られるメンデスは、マンチェスター・シティが獲得を狙っているというルベン・ネヴェスをはじめ、自身の顧客の多くをウルブスと契約させた。そのうち複数の選手はビッグクラブの誘いを断ったという噂もある。また、エスピーリト・サント監督は、メンデスが代理人としてのキャリアをスタートさせた際の"最初の顧客"としても知られている。

 むろん、代理人がクラブの移籍を司ることはリーグの禁止条項だ。この点についてウルブスは、メンデスはあくまで"アドバイザー"であると主張している。いずれにせよ、彼を通じて加入した指導者や選手たちの力により、ウルブスは確実に強くなり、昨シーズンにプレミアリーグ昇格を果たした。

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