モウリーニョ政権の閉塞感を払拭。スールシャールのマンU再建が順調 (3ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by Getty Images

「マーカスは、イングランド代表FWのハリー・ケインに匹敵するポテンシャルを秘めている」とスールシャール。自身も稀代のストライカーとして名を馳せただけに、21歳のイングランド代表FWに特大の期待を寄せているようだ。そんな指揮官の思いに応えようと、ラッシュフォードもリーグ戦5試合で4ゴールと爆発。試合を重ねるごとにフィニッシュワークに磨きをかけている。

 それでも、スールシャールの手腕に懐疑的な意見もあった。就任から公式戦5連勝を飾ったが、カーディフ・シティ、ハダースフィールド・タウン、ボーンマス、ニューカッスル、レディング(FAカップ3回戦)と、相手はいずれも格下だった。

 実際、ボーンマス戦もニューカッスル戦も「依然として連係構築中」といった印象で、最低限の決まりごとのなか、「個の力」で敵をねじ伏せた感が強かった。それゆえ、英BBC放送も「上位陣のトッテナムとの一戦こそが試金石」と位置づけていた。

 ところが、フタを開けてみれば、そのトッテナム戦も勝利した。後半はトッテナムの猛攻を受け、11セーブを記録したGKダビド・デ・ヘアの神がかったシュートストップがなければ、結果は違っていたかもしれない。しかし、トッテナム対策として、本来はMFのジェシー・リンガードを「偽9番」として起用したり、先制点を奪った後は重心を低くして守備重視でプレーしたりと、これまでの試合にはなかった戦術幅も見せた。

 前任者に比べると守備タスクを大幅に軽減させ、選手の自主性を尊重した。ミスを叱り飛ばすのではなく、積極果敢に仕掛けるよう選手たちにハッパをかけた。「私の仕事は、選手にサッカーを楽しんでもらうこと」。就任の際に発した言葉どおり、スールシャールはマンチェスター・Uを包んでいた閉塞感を払拭したように映る。

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