なぜネイマールは敵をつくるのか。チームメイト、監督、税務署... (5ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

◆道徳ボーナス
 PSGはネイマールに対して、1年間、監督を公の場で非難しなければ70万ユーロ(約9000万円)の、そして毎試合、観客に挨拶をすれば40万ユーロ(約5000万円)の"道徳ボーナス"を支払っている。そして最近では、そのこと自体が非難の的となっている。

 ネイマールは、サッカーがただの戦いではなく、ショーでもあることを、幼い頃から肌で知っていた。これは当時においては彼の大きなアドバンテージであった。ピッチに降りるときは、自分の持てるすべての才能を使って、観客が沸くようなプレーとゴールをしようとし、そのことが彼をスターにした。人々はネイマールを見に行くようになった。心躍るサッカーを-約束してくれるからだ。

 しかし、人を楽しませようとするあまり、時にふざけでいるようなトリッキーなプレーをすることで、ネイマールは敵を作った。翻弄された末にゴールを奪われたDFは、それを侮辱と感じたからだ。ネイマールに馬鹿にされていると感じたのだ。そして何が何でもネイマールを止めるために編み出したのがラフプレーだった。

 それでもネイマールは、観客を楽しませるために、スペクタルなサッカーを続けた。相手DFは彼を憎んだが、観客は彼を愛した。チームが勝たずとも名を挙げた。勝敗に関係なく、誰もがネイマールの芸術を楽しんだ。

 スペクタクルなサッカーは両刃の剣でもあった。トップチームに入ってから、彼は敵の再三のラフプレーから自分を守らなければならなくなった。それに対抗するには強靭なフィジカルを持つか、よりスピードをつけるか。ネイマールはスピードを選んだ。

 それでもダメな時は、悪質なタックルを受ける前に倒れることにした。スペクタクルな自分のサッカー守るため、ケガをしないため、ネイマールは倒れるようになった。やがて審判はネイマールの転倒に疑いを持つようになり、倒されても相手のファウルをとらないようになった。

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