ラウンド16へ突入するCL。グループステージを4名の達人が総括した (5ページ目)

小澤 僕もパリに来てからのトゥヘルは、それまでの戦術家というイメージから脱皮したような印象を受けています。クロップもそうですが、やはりスター選手が多いビッグクラブではマネジメントをしっかりしないとうまくチームが回らないということを理解して指揮を執っているのだと思います。そういう点で、サッカー自体もドルトムント時代のような細かい戦術で選手を縛るようなことはなく、自由度を与えたサッカーになっていて、そこが監督としての成長を感じます。

倉敷 今度は亘さんに伺いますが、ナポリを率いるカルロ・アンチェロッティ監督についてはどう見ていますか?

 苦しんでいますよね。重症という言い方は失礼かもしれませんが、個人的にはかなり深刻という印象を受けています。もちろんこのグループはアンチェロッティをしても難しいグループだったと思いますが、どうしても前任者のマウリツィオ・サッリ監督(現チェルシー監督)時代のナポリのサッカーと比べてしまって、そこがもどかしい部分になっているんです。

 もっともわかりやすいのが、両監督の守備の考え方の違いなのではないでしょうか。たとえばサッリ時代はセンターバックのクリバリがとても輝いていましたが、それはボール保持者に対して積極的にアタックをする守備だったからだと思います。ところがアンチェロッティの守備は、確かに堅いことは間違いないのですが、攻撃的な守備ではないのでクリバリのよさが消えてしまったように感じるんです。攻撃面に関しても、すっかりゴールが減ってしまいました。

倉敷 ナポリとリバプールの勝ち点は9で同じでした。直接対決も1‐0と1-0の1勝1敗で1得点1失点ずつと差がない。得失点差も+2で同じ。グループステージ突破の明暗を分ける次の条件は総得点差です。リバプールは9得点、ナポリはわずか5失点ながら7得点しか奪えていなかった。そこがサッリ時代と大きく違う部分でしたね。

 アンチェロッティ監督は「私は4-3-3から4-4-2に変えた。それによって守備が安定した」と記者会見では誇らしげに話しましたが、得点力の低下がグループステージ敗退の原因になったのは皮肉でした。優勝を目指し直接対決で争っていくラウンド16以降であればそれでよかったのでしょうが、グループステージではマイナスに働きました。

 では次にグループD。ここは、ポルト、シャルケ、ガラタサライ、ロコモティフ・モスクワの4チームによる戦いでした。1位になったポルトは5勝1分0敗と圧倒的な成績でしたが、グループ分けに恵まれたようにも思えます。小澤さんはこのグループをどのように見ていますか?

小澤 ポルトはバランスがいいですね。セルジオ・コンセイソンも監督として今後ステップアップしそうな印象を受けましたし、情熱だけではなく、きちんと戦術の落とし込みもやっていて、今後も期待できそうな気がします。

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