ラウンド16へ突入するCL。グループステージを4名の達人が総括した

 いや、正直に言うと、思ってなかったです(笑)。もちろん選手としては2002年のワールドカップでも代表でプレーしていましたし、人間的にもすごく紳士で、選手たちに落ち着いて物事を伝える力があることは確かです。彼もマルセロ・ビエルサ監督の影響を受けている指導者で、シメオネ監督も含めて、最近はビエルサ監督の影響を受けたアルゼンチン人監督が成功しているという印象はあります。僕は彼と同じ歳なので、ぜひ今後も頑張ってほしいと思っていますが。

倉敷 では、もっとも混戦となったグループCに話を移します。このグループは、パリ・サンジェルマン、リバプール、ナポリ、そして以前は日本でレッドスターと呼んでいたツルヴェナ・ズヴェズダが同居していました。最終的には第1節のリバプール戦のみ不覚をとったパリが1位で突破。一方、2位のリヴバプールは実に3敗もしていますが、直接対決でもイーブンだったナポリをなんとか総得点の差で上回りました。中山さん、パリの話からお願いします。

中山 パリに関しては、今シーズンの序盤は決してよくなかったという印象がありました。W杯の影響で主力選手の合流が遅れたこともありますが、トーマス・トゥヘル新監督がいろいろ新しいことを試していて、試合ごとにパフォーマンスが変わって安定していませんでした。そんななか、リバプールとのアウェー戦で敗れてしまったわけです。パリはカタール資本になってからCLに連続出場していますが、初戦を落としたのが初めてのことだったうえ、ナポリ戦は2試合ともドローだったので、さすがにこの調子でベスト4以上を狙うのは厳しいだろうと見ていました。

 ただ、ポイントになったのは2-2で引き分けた3節のホームでのナポリ戦だったと思います。この試合は4-2-3-1でスタートしたのですが、前半に1点をリードされたことで後半開始からシステムを3-4-2-1に変更し、かなり盛り返したところで最後の最後に追いつくことができました。3バックが初めて機能したというか、オプションとして確立するきっかけになった試合だったと思います。

 しかも、そのナポリ戦以降はカウンター対策を怠らないようになって守備意識がものすごく向上するようになったという印象があります。つまり、ナポリ戦以前は4-3-3や4-2-3-1を基本に従来のポゼッション型のサッカーをしていましたが、それを境に堅守速攻型の戦い方もできるようになったというわけです。この新しい戦い方を象徴していたのが第5節のリバプール戦で、あの試合では2-0とリードした後、守備に重きをおいたサッカーで逃げ切ることに成功しています。あのネイマールでさえも、守備をサボっていませんでした。

倉敷 パリのトゥヘルは、ドルトムント時代から何か変わりましたか?

中山 変わったと思います。選手を徹底管理するという部分は継続しているようですが、戦術的には前からプレッシングをかけるのではなく、前線のMCN(ムバッペ、カバーニ、ネイマール)という屈指のタレントのよさを生かすようなかたちの守備方法になっていますね。これはリバプールのクロップ監督に通ずるものがあって、無闇に前から行くことをせず、わかりやすく言えばポジショニングによってパスコースを消しながら守備をするというイメージになったと言えるでしょう。

 また、とにかくトゥヘルは就任直後からネイマールのことを気にしていて、常にネイマールに気持ちよくプレーしてもらうよう、戦術で縛りすぎずある程度の自由を与えています。そういう意味では、自分のサッカーを最初から押し付けようとしたウナイ・エメリ前監督を反面教師にして、なだらかにチームを変えているのが現在のトゥヘルなのではないでしょうか。監督とエースの関係が良好だと、自然とチームの雰囲気もよくなりますしね。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る