ペップの戦術分析。超逸材多数のマン・シティは司令塔が最後尾にいる (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi photo by Getty Images

 その代表格が昨オフにドルトムントへ正式に移り、2年目の今季のブンデスリーガでセンセーショナルな活躍を披露しているジェイドン・サンチョだ。彼もまたフォーデンと同じ18歳ながら、その働きが認められて、10月からイングランド代表にも選出されるようになった。フォーデンが彼に先を越されたと感じたとしても不思議はない。

 しかしフォーデンは自らの道を選択し、このホッフェンハイム戦の2日前に、シティとの契約を2024年まで更新した。競争は熾烈ながら、グアルディオラ監督のもとでこそ、大きく成長できると考えたのだろう。

 それは年上のチームメイトたちが証明していることでもある。シティのドキュメンタリー『All or Nothing』では、ニコラス・オタメンディがピッチ上の激しい表情とはまったく異なる照れ臭そうな笑顔でそれを打ち明けている。レスラーとのスパーリングさえもトレーニングに取り入れる30歳のCBが、グアルディオラのもとで今も大きく成長している、と。

 オタメンディはもう、ハードなファイターではない。このホッフェンハイム戦でも、最終ラインのゲームメイカーのひとりとして、鋭い縦パスを何度も入れた。現在のシティは、司令塔が最後尾にいるのだ。

 この日、守備時の並びは4バックだったものの、マイボールになるとレフトバックのオレクサンドル・ジンチェンコが中盤の内側に入り、エメリク・ラポルト、オタメンディ、ジョン・ストーンズの3人でビルドアップ。GKエデルソンを含め、誰もがボール扱いに長け、ラポルトにいたってはドリブルで持ち上がってシザーズフェイントを繰り出す場面もあった。

 すでにCL決勝トーナメント進出を決めていたシティは、ヨーロッパリーグ入りの3位を目指すホッフェンハイムに序盤から押され、16分にはラポルトがPKを献上。アンドレイ・クラマリッチに決められて先制を許す。これで目が覚めたシティは「いつもの自分たちの姿を取り戻し」(グアルディオラ)、主導権を握ると、前半終了間際にレロイ・ザネが見事な直接FKで同点とする。そして後半にもザネが決めて逆転に成功した。

 その後の71分には、こんな場面があった。フォーデンが中盤の低い位置に降りてきてボールを引き出そうとしたところ、ボールホルダーのオタメンディは「前に行け!」と身振りで示し、実際にそうしたフォーデンにボールが入って、ミドルシュートにつながっている。

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