CL16強決定。最激戦区を勝ち抜いたリバプールとサラーは頂点を狙える (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Getty Images

 たとえばアリエン・ロッベン(バイエルン)なら、こうした状況では、8割方内へ切れ込み左足でシュートを狙おうとする。身体を傾け、懐深く保ちながら、まさに半身の体勢で、シュートポイントを探るようにジワジワと侵入する。リオネル・メッシ(バルセロナ)が右サイドでボールを受けた場合も、たいていこれだ。内への切れ込みこそが左利き選手の定番アクションになる。

 だが、サラーはドリブルが得意な左利きとはいえ、ロッベン、メッシとは少し違う。内へも切れ込むが縦にも行く。可能性はほぼ50対50。瞬間、身体をヒラヒラさせながら、どちらに行くかわからない雰囲気を醸し出す。

 縦に進むと、プレーの選択肢は限られる。シュートではなく、折り返しがメインになる。使用する足も利き足の左ではなく右になる。キックの威力、精度は半減する。ロッベンやメッシが8割方内へ切れ込もうとする理由でもあるが、リバプールは3トップで、他の2人(ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ)にも決定力がある。サラーがアシスト役に回ってもマイナス要素にはならない。

 なによりサラー自身が、内への切れ込みより、縦に抜くことに快感を覚えている様子だ。ゴール前の様子をうかがいながら走るので、先行するのは右足になる。ボールとそれを操作する左足を、後方に残しながら前進する。

 相手との間合いを縦にずらすそのステップワークに、対峙したクリバリは幻惑された。どちらの足にタイミングを合わせるべきか、迷っている間に縦方向にあっさりかわされた。

 もっとも、並のウインガーなら、ここから先のプレーは大雑把になる。得意ではない右足で雑なプレーに及ぶものだが、サラーは右足でも芸を発揮した。マイナスの折り返しを装う視線を中央に送る目のフェイントをかけながら、右足のインサイドでGKダビド・オスピナの股間を狙ったのだ。

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