CLの常連・シャフタールのオーナーは、トランプともプーチンとも縁がある (2ページ目)

  • ジェームス・モンタギュー●取材・文 text by James Montague 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 チェルシーのウィリアン、マンチェスター・シティのフェルナンジーニョ、ユベントスのドウグラス・コスタらは皆、欧州での最初のクラブにシャフタールを選んだ。現在のチームにも、9人のブラジル人選手が在籍している。

 シャフタールの成功により、アフメトフはウクライナ東部で人気者となった。しかし彼にはそれ以外の顔もある。政治的陰謀、汚職、クーデターとの関与が疑われているだけでなく、あのドナルド・トランプの元アドバイザーとのつながりもあるのだ。

 アフメトフは1966年に、まだソ連だった頃のドネツクで生まれた。母は掃除婦で、父は炭鉱労働者。ウクライナ東部における最大の経済的資源である石炭は、当地で非常に重要視されており、シャフタールのエンブレムにも交差するふたつのハンマーが描かれている。

 1991年のソ連崩壊後、ウクライナは経済に関してロシアと同じ道を辿った。オリガルヒ(新興財閥)が台頭して豊富な天然資源の権益を握り、権力まで手にした。とくに鉱物が豊かな地域は同国東部に広がり、そのあたりとクリミア半島を含む南部は、言語的、文化的にロシアと強いつながりがある。

 ドネツクにはひとりの"ゴッドファザー"がいた。「ドネツク・クラン」と呼ばれた犯罪組織の長、アハト・ブラギンは1990年代中頃のウクライナ東部で、もっともパワフルで大きな影響力を持った人物だった。彼もサッカーが大好きで、シャフタールのオーナーとしてチームに資金援助していた。

 ところが1995年に当時の本拠地、ドネツク市民スタジアムで爆発物によるテロに遭い、5人のボディガードと共に文字どおり消された。その爆破は凄まじく、警察の捜査で見つかったものはただひとつ。金の腕時計がついたままの、ブラギンの腕の一部だった(のちに警官も組織犯罪に関わっていたことが判明している)。

 当時、アフメトフはまだひとりの若者に過ぎなかったが、ブラギンの助手を務めていたことから"ビジネスの帝国"を引き継ぐことになり、その中にシャフタールも含まれていた(その際の詳細は明かされていないが、アフメトフは犯罪や汚職への関与を強く否定している)。

 アフメトフはブラギンよりも、はるかにビジネスの能力に長けていた。ウクライナの鉄鋼所や鉱山の半数以上を保有しながら、メディアや不動産などの事業も展開。政界進出も果たし、親ロシア系の政党に多額の経済的サポートをすると共に、ビクトル・ヤヌコビッチの大統領選挙も援助した。

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