名門モナコが迷走中。
名将解任後にアンリを招聘も降格圏に沈む

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 しかも、その状態は指揮官がアンリにバトンタッチして以降も続いており、第16節(12月4日)のアミアン戦でも計13選手が故障欠場するなかで戦うことを強いられている。こういった状況下では、どんな名監督でもチーム強化は図れない。

 そして、その状況に追い打ちをかける格好となったのが、10月にフロントが下した「ジャルディム解任」という決断だった。

 ジャルディムが指揮を執った過去4年間の実績とその功績を考えれば、その決断は浅はかだったと言わざるを得ない。トップチームの選手はもちろん、フォルマション(育成部門)の選手も熟知している指揮官だからこそ、シーズンを戦いながら苦境から脱出する糸口を見出せたはず。実際、ジャルディムはその手腕によって黄金時代を作り上げていた。

 しかし、今夏にムバッペの完全買い取り金とされる推定1億8000万ユーロ(約230億円)を手にしていたフロントは、実績よりも知名度を重視したブランディング戦略により、監督未経験のアンリを招聘するという暴挙に出た。

 もちろんこの大胆人事は、フランス国内だけでなく世界的にも注目を浴びたため、モナコというクラブのブランド力を上げたことは間違いない。ただ、その代償は予想以上に大きく、チームがさらなる迷走状態に陥ったことは紛れもない事実である。

 結局、初采配となった第10節のストラスブール戦以降、アンリ新監督が公式戦で初勝利を手にするまでに約1カ月を要した。ケガ人が続出するなか、まだプロ契約もしていない多くの若手を起用せざるを得なかったとはいえ、試合ごとにシステムを変え、ますます選手を混乱させて自信も失わせてしまう采配を見ると、しばらくはモナコが迷宮から脱出することは難しいと思われる。

 試合中の表情やしぐさを見るかぎり、そもそもアンリ自身から指導者としての自信が失われている。このままでは、せっかくの現役時代の華々しいキャリアに大きな傷がついてしまうのではないかと心配になってしまうほどだ。

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