アーセナル、宿敵を撃破。停滞感を払拭したエメリ監督の改革 (3ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 思い返せば、前任のベンゲルはスタメンで起用した選手を信頼し、なかなか選手交代に踏み切らなかった。1試合で3つの布陣を使い分けることなど、ベンゲル監督時代ではまずありえなかっただろう。

 しかしエメリ政権では、ハーフタイムでの選手交代が今回で7試合目と、実に多い。加えて、トレーニングでも「戦術練習が格段に増えた」(英紙デーリー・メール)という。複数の戦術とフォーメーションを使いこなすのが指揮官の狙いのひとつで、その結果、トッテナム戦でもプランA→プランB→プランCと戦術を変え、勝利を引き寄せた。

 英BBC放送は、エメリ体制について次のように評価する。

「ベンゲル前監督の功績を過小評価するつもりはないが、長期政権を経て、アーセナルは変革の必要性があった。クラブもサポーターも腐りかけ、新しい希望を見出す必要があった。断言するにはまだ早いが、エメリ政権の見通しは明るい」

 キックオフ直後、ベンチで十字を切って勝利を祈ったエメリ監督も、試合後は「アーセナルの監督に就任してから今日が最良の日」と微笑んだ。しかし、「喜ぶのは、ほどほどにしたい。今は12月5日に行なわれるマンチェスター・ユナイテッド戦のことを考えたい」と、すぐに気持ちを切り替えていた。

 長期政権を引き継ぐ難しさは、アレックス・ファーガソンの引退から続くマンチェスター・Uの苦戦が証明している。しかし、ベンゲルからバトンを受け取ったエメリは、ここまで新しい息吹をもたらすことに成功している。

 第14節終了時点で、3位チェルシーと1ポイント差の4位につけるアーセナル。はたして、エメリ体制はどこまで上位に食い込めるだろうか。

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