2018.11.22

どん底からV字回復。オランダを
蘇らせた「クーマンの秘蔵っ子たち」

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 試合の流れを変えたプロメスのゴールが決まった直後、スタジアムではオランダサポーターの「イチかバチか、やってみろ!」というチャントが歌われた。ちょうどその時、ドワイト・ローデヴェーヘス・コーチがクーマン監督に渡したメモが、ケニー・テテ(リヨン)→マタイス・デ・リフト(アヤックス)→ファン・ダイクと経由されながら選手に伝わっていた。そのメモには3-2-3-2のシステムで各選手の布陣が記されていたという。

「このメモはサッカー博物館行き、間違いないですね」「今の時代に手紙の伝言がもっとも有効なんですね」とジョークを飛ばすインタビュアーに対し、クーマン監督は「もっともベンチの近くにいたテテを呼んでメモを渡した。選手たちはフィルジル(ファン・ダイク)が前線に上がることから、即座にロングボールを蹴る戦術であることを理解し、それを実行した」と笑顔で答えた。

 2016年のユーロ、2018年のワールドカップと、直近のビッグイベントで2度も予選敗退して暗黒期に入っていたオランダだけに、ネーションズリーグの快進撃は皆、うれしそうだ。フランスに勝った翌日、街に出てみると、図書館やカフェでオランダ代表のことを楽しそうに話す人々がいた。

 オランダという国には、サッカーのDNAがしっかりある。全国紙の2面に、こんな記事が載ったことがある。

「オランダのスーパーマーケットでアルバイトをしている16歳の少年が、アマチュアサッカークラブのトップチームに昇格して試合に出られることになり、『風邪を引いた』と嘘をついてバイトをサボった。すると、彼が同点ゴールのアシストを決めて地元紙に載ったことにより、嘘がバイト先の上司にばれてクビになってしまった。『僕はバイトをサボって試合に出たことを後悔してない』と少年。一方、スーパーマーケットからコメントはまだ取れてない」

 こんな記事がビッグニュースとして載るお国柄である。