ルーニー、代表最後の晴れ舞台。2年ぶりでもセンスは錆びていなかった (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 しかし、ボールタッチの柔らかさや攻撃センス、周囲を活かす動きは、まったくと言っていいほど錆(さ)びついていなかった。後半29分には、スルーパスで好機を演出。その際に見せた確かな技術と高いセンスに、ルーニーのうまさが凝縮されていた。

 しかも、「4−3−3」の前線すべてのポジションをこなす万能性も見せた。投入直後は左FWの位置に入ったが、3分後には18歳の新鋭FWジェイドン・サンチョ(ドルトムント)とポジションをスイッチ。右FWをこなした後、最後の10分間はセンターフォワードとしてプレーした。

 加えて、守備タスクもきっちりこなして懸命に敵を追いかけた。サウスゲート監督も「練習で身を粉にし、ミニゲームでもハードワークをこなす。試合では守備に走った。現代表選手たちも、ウェインのひたむきな姿勢を見習うことだろう」と手放しで褒めていた。

 イングランド代表の歴代最多ゴールスコアラーでありながら、守備も厭(いと)わない献身性を備え、味方を活かす利他性にも優れる――。ネットを揺らすことだけに徹していれば、イングランド歴代最多得点となる53ゴールをさらに上回っていたような気もするが、こうしたハイブリットなプレースタイルこそ、ルーニーの最大の持ち味だろう。

 筆者は香川真司のマンチェスター・ユナイテッド在籍時、2シーズンにわたり同クラブの密着取材を行なう機会に恵まれた。その際、目を奪われたのが、当時マンチェスター・Uに在籍していたルーニーのサッカーIQの高さだった。

 FWとして高い決定力を有していながら、「周囲を活かす技術」や「視野の広さ」もチームのなかで突出していた。香川の特性をもっとも理解していたのもルーニーで、誰とでも良質のコンビネーションを構築できる選手だった。強面とは裏腹に、器用で繊細なプレーができ、動きの幅も広い。そんな印象を抱いたのをよく覚えている。

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