PSGが驚異の開幕12連勝。トゥヘル監督の「アメとムチ」が絶妙すぎる (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 同時に、プレシーズンからオプション的に3バックを頻繁に試しており、こちらも試合を重ねるごとにブラッシュアップさせていた。その結果、大一番のチャンピオンズリーグ第4節のナポリ戦(11月6日)で採用するに至っている。

 振り返れば、ブラン時代からのPSGは「プチ・バルサ」と評された4-3-3を浸透させて国内無敵を誇っていた一方で、それ以外のオプションが存在しないために、チャンピオンズリーグ8強の壁を乗り越えられずにいた。それを考えると、複数のシステムを状況に応じて使い分けるトゥヘルのチーム作りは、「新生PSG」の旗印となる可能性を秘めている。

 それ以外にも、マルキーニョスのボランチ起用に象徴されるように、6番タイプの選手にこだわりを見せるのも、トゥヘル戦術の特徴のひとつだ。このカウンター対策のおかげで、プチ・バルサを標榜していた時代にアンカーを務めることもあった攻撃的なタイプのラビオは、難敵相手の試合ではベンチを温める機会が増えるかもしれない(実際、アウェーでのナポリ戦ではユリアン・ドラクスラーがヴェッラッティとコンビを組んでいる)。

 しかし逆に言えば、選手層の薄さが気になっている今シーズンのPSGにとっては、ラビオが前線の控えとしてベンチに座り、さらに長期に渡って戦線を離脱しているダニエウ・アウベスとレイヴァン・クルザワの両サイドバックが復帰すれば、ベンチ要員も含めて再び強力なラインナップが揃うことになる。これに加え、冬の移籍マーケットでトゥヘルが熱望する6番を手に入れられれば、それこそ新しいPSGの陣容が完成するはずだ。

 いずれにしても、現在も続く開幕連勝記録は、まだ成熟していないチームとしては出来すぎとも言える。ただそれだけに、これからのチームの伸びしろを考えたとき、少なくとも国内ではPSGはしばらく連勝記録を更新し続ける可能性が高いと見ていいだろう。

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