PSGが驚異の開幕12連勝。
トゥヘル監督の「アメとムチ」が絶妙すぎる

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 たとえば第11節の「フランスダービー」マルセイユ戦。同日に行なわれたスペインのエル・クラシコをテレビ観戦したために集合時間に遅れたキリアン・ムバッペとアドリアン・ラビオに対しては、シーズン屈指のビッグマッチにもかかわらず、その罰としてベンチスタートを命じた。

 その一方で、深夜の飲酒運転で逮捕されたマルコ・ヴェッラッティに対しては、事件翌日にヴェッラッティが自ら監督とチームメイトに謝罪したこともあり、「試合3日前の深夜外出は規則外」という理由により、11月2日のリール戦ではスタメンに起用。柔軟な対応を見せている。

 もっとも、件(くだん)の遅刻を犯した主力ふたりも後半に途中出場を許され、とくにムバッペは出場直後に罪滅ぼしとも言える先制ゴールを決め、勝利に貢献する形で信頼を回復。また、トゥヘルが自ら「今シーズンのベストパフォーマンス」と選手を称賛したリール戦では、ムバッペの先制ゴール後にキャプテンのチアゴ・シウバが猛ダッシュで指揮官に駆け寄って抱きついたシーンが見られたが、これも監督と選手が良好な関係にあることの証(あかし)と言えるだろう。

 トゥヘルがPSGで見せる柔軟性は戦術面にも表れており、たとえばここまで採用されてきたシステムの変遷がそのひとつだ。

 開幕直後からトゥヘルが使っていたのは、ローラン・ブラン時代からチームに浸透していた4-3-3。前任者のエメリは就任直後から4-2-3-1を採用し、自分のやり方を植えつけようとしたが、それに主力選手が反発して4-3-3に逆戻りしてしまった失敗例がある。それを知ってか、まずは指揮官が妥協する恰好でチーム作りに着手した。

 しかし、チャンピオンズリーグ初戦のリバプール戦でそれが機能困難と判断すると、その後の第7節のスタッド・ランス戦からいよいよトゥヘルが好む4-2-3-1に移行。10番ネイマールをトップ下に配置して自由を与える戦術に舵を切ったが、それによる選手からの反発はなく、実にスムースな形で4-3-3との離別に成功したのである。

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