ミランの新オーナー、中国人富豪の次は「ハゲタカファンド」? (4ページ目)

  • ジェームス・モンタギュー●取材・文 text by James Montague 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 リーが債務を返済できなくなる以前、スカローニはイタリア国内のメディアに「EMCはフットボールクラブにまったく興味がない」と話している。

「(ポール・シンガーの息子でEMCのロンドンオフィスを経営する)ゴードン・シンガーはフットボールクラブの会長になりたいと思っていないはずだ」とスカローニは言った。その後、ポールの親しい友人でアーセナルのCEOを務めていたイバン・ガジディスが、噂通りに新CEOのポストに収まることが決まった。

 EMCはミランの経営を安定させるべく、すでに5000万ユーロを投じている。これはUEFAのご機嫌をうかがうためのようにも見え、実際にスポーツ仲裁裁判所は、ミランに一度は剥奪された欧州カップ戦出場権を与えた。その理由は「(ミランの)現在の財政状況は、オーナーが代わったことにより、まともになった」からである。

 いずれにせよ、ハゲタカファンドと呼ばれるEMCは、リーのもとで困窮していたミランを買収した。それが計画されたものか、気まぐれによるものかは定かではない。ただしこれだけは言える。シンガーはここでも十分な利益を上げない限り、身を引くことはないだろう。

■著者プロフィール■
ジェームス・モンタギュー

1979年生まれ。フットボール、政治、文化について精力的に取材と執筆を続けるイギリス人ジャーナリスト。米『ニューヨーク・タイムズ』紙、英『ワールドサッカー』誌、米『ブリーチャー・リポート』などに寄稿する。2015年に上梓した2冊目の著作『Thirty One Nil: On the Road With Football's Outsiders』は、同年のクロス・ブリティッシュ・スポーツブックイヤーで最優秀フットボールブック賞に選ばれた。そして2017年8月に『The Billionaires Club: The Unstoppable Rise of Football's Super-Rich Owners』を出版。日本語版(『億万長者サッカークラブ サッカー界を支配する狂気のマネーゲーム』田邊雅之訳 カンゼン)は今年4月にリリースされた。

(7)へつづく>>

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