ネイマール獲得、カタールW杯招致の陰で...「今そこにある疑惑」 (2ページ目)

  • ジェームス・モンターギュ●取材・文 text by James Montague 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 カタールは外交政策の基幹事業として、当時からスポーツに力を入れていた。大きな大会を開催し、膨大な額の投資をすることの目的はふたつ。ひとつは自国のイメージを高め、国際的な知名度を得ること。もうひとつは世界の先進国と等しい立場のパートナーであることを印象づけるためだった。

 2004年にはエリート・アスリートの養成施設「アスパイア・アカデミー」を設立し、ゴルフやモータースポーツなどの主要大会も招致した。サッカーにおいては、カタールのプロリーグ「カタール・スターズリーグ」のクラブが、選手キャリアの終盤を迎えていたペップ・グアルディオラやマルセル・デサイーといったビッグネームを獲得。そして政府が出資するカタール財団とカタール航空が、バルセロナと巨額のスポンサー契約を結んだ。

 もちろん、最大の成功は2022年W杯開催権の取得だが・・・・・・疑惑はある。2010年W杯のホスト国が南アフリカに決まったときと同じように、カタールにも疑いの視線は向けられているのだ。

 2010年11月、つまりW杯開催地を決める投票の前に、カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ皇太子(当時)とアル・ケライフィ、ミシェル・プラティニUEFA会長(当時)、そしてフランスのニコラ・サルコジ大統領(当時)がエリゼ宮で会合を持った。これについては、今でも疑惑が晴れていない。プラティニは一貫して、「カタールに投票するように頼まれたことは一度もない」と主張しているが、いずれにせよ、彼の票はカタールへ投じられた。

 W杯開催権をカタールが手にすると、今度はPSG──サルコジ元大統領がひいきにするクラブだ──がQSIに買われた。さらに2014年にはbeINスポーツ(カタールの衛星テレビ局)がフランス国内のフットボールの放映権を10億ドルで契約。beINスポーツはその後、中東におけるプレミアリーグとチャンピオンズリーグ、2018年と2022年のW杯の放映権を次々に手中に収めた。

 そのbeINスポーツを設立し、会長に収まっているのも、PSGのアル・ケライフィ会長だ。そして、QSIの創設者でフットボール好きなシェイク・タミームは、2013年に父からカタール首長の座を継承した。

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